高品質の酒こそ地の米で。
石の蔵で醸す純米酒
小松市の北部、田園の広がる野田町で1860年に創業した神泉醸造元の東酒造は、美しく力強い石造りの蔵を有する。
石は地元小松市観音下の山から切り出した凝灰岩で、古墳時代前期は装身具に使われ、きめ細かな石質は加工しやすく建築物にも重用された。
小松市は昭和初期に2度の大火に見舞われたが、耐火性、断熱性に優れた東酒造の石の蔵は全て残った。「火事に強いだけでなく、醸造にも向き、居住性も良くて快適です」と7代目の東祐輔さん。
2009年に酒蔵と住居12棟が国の登録有形文化財に、16年には酒蔵が日本遺産の認定を受けた。
創業160周年を迎える20年、石の蔵の一つを売店とイベント場として整備。醸造期間を除いて酒蔵見学を受け入れ、茶室や庭も予約制で公開する。
「酒を売るだけでは蔵の思いや取り組みが伝わらず、実際に見て知ってほしくて」。