地元縛りの
高品質な純米酒で大成功!
奈良と会津の結び付きは平安時代にさかのぼる。空海や最澄と同時代に活躍した高僧、徳一が奈良から会津に移住し、多くの寺院を建立して敬われた。その縁あってか会津には奈良屋という屋号が多い。喜多方市の夢心酒造もその一つだ。
土建業から転身し、1877年に酒造業を創業。順調に業績を上げ、1980年代は普通酒の製造1万1000石を誇った。
「当時はほぼ市内消費です。約4万人の喜多方市ですから大酒飲みが多かった(笑)」と蔵元の東海林伸夫さん。だが売れ行きに陰りが出て、危機感から98年に新ブランドを開発した。
高品質の純米酒と純米吟醸酒に特化し、屋号と創業者の萬次郎から奈良萬と命名。米は地元産の五百万石で、酵母は福島県が開発したうつくしま夢酵母のみと潔く決めた。根拠はその組み合わせで、全国新酒鑑評会で3年連続金賞を受賞したことだ。
当時の越後杜氏いわく「俺は五百万石で良い酒を造れるから山田錦はいらねえ」。だが、そう決めたものの設備は普通酒1万石用で吟醸酒には不向き。そこで酒の指導で名高い県営の福島県ハイテクプラザに相談し、指導を仰ぎ試行錯誤して完成させた。
地元縛りの酒は特徴が明快で、県外の地酒専門店で火が付き、20年間で600石に増えた。対して普通酒は400石と順調に(?)下がり、屋台骨の転換成功。
奈良萬は特に純米酒がうまいと評価が高いが、実は純米吟醸酒を名乗れる品質。
「他と比べたら明らかにうちのがうまい!」と、作戦勝ちの伸夫さんは満面の笑み。
●夢心酒造・福島県喜多方市字北町2932●代表銘柄:奈良萬 純米大吟醸、奈良萬 純米吟醸●杜氏:石川達明●主要な米の品種:五百万石