令和2年度の「現代の名工」に、94歳の日本最高齢のバーテンダー、井山計一氏が選ばれた。伝説のカクテル「雪国」が生まれた背景を追うと、全国のバーテンダーが知らない真のレシピと由来に関する意外な事実がそこにあった。(マーケティングコンサルタント 新山勝利)

井山計一氏日本最高齢バーテンダーの井山計一氏 Photo by Shouri Niyama

「現代の名工」に選出された
94歳の日本最高齢バーテンダー

 その道で第一人者と目されている技能者を厚生労働大臣が表彰する「卓越した技能者表彰制度」。「現代の名工」は、そのような技能者の通称である。

 このたび、令和2年度の表彰者150人のひとりに、94歳の日本最高齢のバーテンダー、井山計一(いやまけいいち)さんが選ばれた。

 ひとさまの歴史を振り返ると、人生の分岐点はいくつもある。井山さんもそうした分岐点に何度も遭遇していた。

「あなた、バーテンさん?」

 電話の向こうで、井山さんが私に問いかけた。カクテル「雪国」のことを質問したのと、東京から訪問したい旨を伝えたためだ。