「ラーメン1000円の壁」に解決策はある?ケンブリッジ大教授の「答え」がぐうの音も出ない正論だったPhoto:PIXTA

なぜ外国人は日本のラーメンが好きなのか。ラーメンの歴史を、明治維新以降の近代化と食、戦後の対米関係やポップカルチャーとの関連も含めて論じた『ラーメンの歴史学――ホットな国民食からクールな世界食へ』を書き上げたケンブリッジ大学教授、バラク・クシュナー氏に話を聞いた。(国際ジャーナリスト 大野和基)

「ラーメン1000円の壁」にどう立ち向かうか

――外国人は日本のラーメンのどんなところが好きなんでしょうか?

 とにかく安くて美味しい。ジュネーブではラーメンが1杯3000円くらいで高いと思いながらも、美味しいからみんな食べています。外国人は、肉や魚の出汁が効いた熱いスープに麺が浮かんでいるラーメンが好きなのだと思います。この料理は、中国のラーメンとは異なるものです。中国はスープに時間をかけるよりも、麺に時間をかけます。

 日本のラーメン店は、各店が独自の個性を出そうとしています。以前、私がインタビューしたラーメン職人はこう言っていました。「ラーメン作りはジャズのようなもの」「皆が即興でやる」と。ジャズのライブに行く人は、他の人と同じ音楽を聴きたいのではなく、ジャズバンドが即興で何を演奏するかワクワクしたくて行くのです。

 それでいてラーメンは、「皆が楽しめるもの」だと思います。そこが他の食べ物とはかなり違う点です。値段は高くないのに、手が込んでいる。ひとりでも店に入って席に着いて10分もあれば食べ終えることができます。お酒を飲んだ後にもぴったりです。女性客もたくさんいます。

 アメリカから友人らが遊びに来た時、仕切りの付いた座席でラーメンを集中して食べる店に絶対行きたいと言われました。この店が、日本の独特なラーメン文化が海外に広まるきっかけにもなり、YouTubeでもたくさん紹介されています。

――日本は今、物価高に苦しんでいて、ラーメン屋でも原材料の仕入れ値や光熱費、人件費も上がっているそうです。一方で、ラーメンは大衆向けの食べ物なので、1杯1000円以上になれば客は高過ぎると感じて違う飲食店に行ってしまうジレンマを抱えています。どうしたら解決できると思いますか?