死ぬ間際になって分かる、
心理学的な結婚の意味
大塚:僕が諸先輩方に聞いたところによると、夫婦におけるコミュニケーションの取り方を後悔している人が特に多かったのですが、心理学で気をつけるべきポイントはどの辺りにありますか?
植木:まずは相手の立場になって会話する、ということですね。つまり、答えが「はい」か「いいえ」、または二者択一に絞られるようなクローズドクエスチョンではなく、相手に自由に答えさせるオープンクエスチョンで投げかけるということ。たとえば「今日はどこに行きたい?」とか「何を食べたい?」という具合ですが、これはソフトインテリジェンス的な会話と言えます。
大塚:面白いですね。僕が会社員をしている頃に身につけたのは、まさにクローズドクエスチョンでの営業方法だったんです。家庭ではオープンクエスチョンにするというのだから、まさにここでも仕事と家庭は逆の方向性ということになる。この仕組みを知っているか知っていないかって、結婚生活においてすごく大きな差ですよね。
植木:その通りですね。この仕組みを頭に入れた上で、ハードインテリジェンス優位になっているなと思う人は、自分の感覚のむしろ反対のことをやってみたら、家庭内では意外とうまくいく可能性もあります。
大塚:ただ、妻にオープンクエスチョンを投げかけて、結局「何でもいい」って答えが返ってくるとまた困るんですけどね(笑)。そのときには、ちょっとハードインテリジェンスが入っちゃうかもしれないけれど、相手の気分を推し量りながらいくつかクローズドクエスチョンで提案してもいいんでしょうか?
植木:もちろん、ソフトとハードをうまく組み合わせればいいと思います。
大塚:いやあ、今日の対談の内容は、本当に腹に落ちました。諸先輩が語っていたことの裏側にあるのは、こういうロジックだったのか、と。結婚とビジネスにここまで関連性があるとは、想像以上でしたね。
植木:裏表というか、つながっていますよね。プロポーズってビジネスで言えば「営業」に当たるのでしょうし、結婚生活は「マネジメント」なわけですから。
大塚:プロポーズが営業……う〜ん、確かに。
植木:いろいろな場所でよく言っていることなんですが、心理学的に結婚の意味っていうのは、人生の老年期にさしかかった時、「この人と、死んでもいいか」と思えるということなんです。
自分だけが年を食ったわけじゃないし、この“戦友”も白髪が増えておばあさん、おじいさんになってきた。いろいろもめ事があったけれども、まあまあの人生だったな、と納得できる。これはパートナーがいる人じゃないとできないことなんですよね。
大塚:隣にそういう相手がいないと思えない、と?
植木:そうです。例えば若い頃の心理的な宿題は、アイデンティティを形成することですよね。自分探しをする若者っていまだに多いことからも分かります。でもそれって1人でできるんですよ。
一方で老年期の宿題、つまり精神的な面での「死ぬ準備」に当たるわけなんですけど、これは1人ではしづらいんです。
大塚:複雑な思いが去来して、なかなか自分を納得させることができないものでしょうね。
植木:でも子どもがいてもいなくても、パートナーがいればそれは意外とスムーズにいく。実際パートナーのいる人のほうが、死ぬ前にメンタルが安定すると言われています。
だから心理学上で結婚の意味というのは、実は老年期にほとんどが込められているんですね。だからこそ、パートナーはとても大切なんです。若い頃はその大切さを実感できなくても、歳を重ねるごとにじわじわと分かるようになるものですから。
大塚:とても考えさせられる深いお話ですね。今日は本当に勉強になりました。ありがとうございました。(了)
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