自分のキャラクターが少ない人ほど精神的に折れやすい。それは結婚生活でも同じで、複数の顔を持つことが、家庭円満や幸福感とも密接に関係しているようだ。『ホンマでっか!?TV』等で活躍する人気心理学者の植木理恵さんと、新刊『結婚を後悔しない50のリスト』の著者・大塚寿さんが語る、心理学にみる結婚マネジメントのコツとは。
ペルソナを複数持つことで
結婚生活も円満になる
大塚:前編で心の健康を保つためにも、1人の人間が5つくらいのペルソナを持つことが大切とうかがいましたが、具体的にはどんなものが考えられますか?
植木:何でもいいと思うんですよ。まずソフトインテリ、ハードインテリっていうのはある意味、2つのペルソナですよね。その他にも例えば「子どもに優しいお父さん」とか、「釣りに没頭する趣味人」とか、それに取り組んでいるときは集中して他の何者でもなくなっている、というような時間を作るということ。
専業主婦の場合も、子どもには「お母さん」というペルソナで接し、夫には「妻」というペルソナで接する。外に出かけたときは「女」になるというのでもいいんです。
大塚:例えば、ペルソナごとに名前を付けてみるのはいかがですか?ちなみに家では僕、「大塚寿」のほかに、「ことぶき」「ことぶきお」「ロドリゲス」っていうニックネームがあるんです。
植木:ロドリゲス?なんですか、それは(笑)。
大塚:どういうキャラクターかという明確な設定があるわけではないのですが、替え歌で鼻歌、歌っている時に、音が面白くて自分で作っちゃったんです(笑)。息子たちと遊んでいるときなんかは、「ロドリゲス」と自称することがよくあるんですよ。「パパは許してもロドリゲスは許さない」とか。いまや我が家ではものすごく有名なキャラクターになっていて。
植木:よくわからないところもありますが(笑)、でもいいんですよ。ペルソナは本人が了解していれば何だっていいんです。
大塚:我が家では娘とか息子にもTPOに合わせて「プー」とか「ポン太郎」とかいろんなニックネームを与えているんです。この前は、娘がアフロヘアーのかつらをかぶってサングラスを掛けて遊んでいたから、「ボンゴちゃん」っていう新しいキャラを作りました。
植木:茶目っ気たっぷりの家族ですね。柔軟にいろんなキャラが存在しているっていうのは家庭を明るくしますし、健全です。お父さんはお父さんらしく、娘は娘らしく、みたいな家のほうが、家族の具合が悪くなりがちですから。
大塚:そうですか、ほっとしました(笑)。ただロドリゲスは僕が勝手に作ったキャラですが、普通は違う環境に身を置くだけで新しいペルソナってできるものですよね。テニススクールに入ったり、絵画教室に通ったり、いつもの自分とは全然違う何かを始めたら、自然と新しい顔が生まれてくる。
植木:もっと言えば、朝、会社行く前にウォーキングするとか、会社から帰る前に寄り道するというだけでも、会社のときの自分と合わせて3つのペルソナができるわけです。だからペルソナを複数持つといっても、難しく考える必要なんてないんですよ。
大塚:いろいろなペルソナを切り替えながら生活したら本人が幸せだというだけでなく、家庭が明るくなったり、夫婦関係も円満になったりする理由は何ですか?
植木:ペルソナが何個かあると、その場その場によりふさわしいものを選びとり、相手に合わせられる余裕を持てるからです。1つしかなかったら、もう頑なに通すしかない。
いろんなパターンを持っているからこそ、ここぞというときの選択が上手くいくんじゃないでしょうか。仕事人間になるべきときには徹底し、よき夫になるときはなり切る。仕事と家庭を上手にマネジメントする秘訣ですよね。