結婚には何かと後悔が付き物である。男女の違いが浮き彫りになる結婚を、心理学的に解消するコツはあるのだろうか?『ホンマでっか!?TV』等でも活躍する人気心理学者の・植木理恵さんと、新刊『結婚を後悔しない50のリスト』の著者・大塚寿さんが語る、結婚マネジメントの秘訣。
恋人期間は「異質性」を、
結婚後は「同質性」を求める
大塚:恋愛をして好き同士で結婚して結ばれた2人なのに、結婚前と後で理想と現実が食い違い、夫婦関係がうまくいかなくなるとよく聞きます。ちりも積もれば山となる、じゃないけれど、日常の小さなことが積み重なり、あるときドンと噴火してしまう。
植木:心理学の分野にストレスマグニチュードという指標があるのですが、ある調査によるとストレスのかかる出来事の1位は伴侶との死別、そして4位が結婚なんですね。ちなみに離婚は6位と、結婚より下です。
大塚:へえ、意外ですね。離婚より結婚の方が上なんですね。
植木:結婚するというのは、めでたいことなんですけども、それ自体がすごくストレスになるんです。結婚後のうつって、実は離婚後より多いんですよ。
大塚:それは知らなかったな。確かに結婚するときって将来の生活のことをあまり考えませんよね。新居をどこに構えるかとか、家財道具は何が必要かとか、用意してもせいぜい結婚後数ヶ月間くらいの瞬間的スパンでのこと。
でも結婚って、実は愛情や相性とは全然違うもので成り立っていて、結婚式の後はただ普通の生活が何十年と待ち構えているわけです。それなのに、そこに対する準備がまったくできていないと、ギャップでストレスがかかるのかもしれません。
植木:後になれば、どうして結婚前はそのことに気づかないんだろう、って不思議になりますけどね(笑)。私が監修・翻訳した著書『「一生愛」のルール:「恋と結婚」、この人に大切にされるために』にもありますが、恋愛中は異質性や意外性を見つけることが「快感情」なんです。自分と違う部分があるからこそ、その違いをなくしたい、と恋愛の気分が盛り上がっていくんですね。でも結婚すると、まったく逆に変化する。いかに同質であるかに喜びを感じるようになるため、「違う」ということに腹が立ってくるんです。
大塚:すごくわかりやすい説明ですね。僕もこれまで1万人の諸先輩方に後悔についてインタビューしているのですが、やっぱり結婚が上手くいっている人って、自分と相手の同質の部分を探して、プラスに捉えようとしているように感じますね。相手と違っているところに自分の正義をぶつけるのではなく、交わる部分を見つけ出そうと努めている。
植木:同質な部分に「焦点化する」っていうことが結婚後のコミュニケーションには重要です。インテリジェンス(知性)にもハードとソフトがあることをご存知ですか?
大塚:一体何ですか、それは?
植木:アメリカでは、インテリジェンスを「ソフトインテリジェンス」と「ハードインテリジェンス」に分けて考えるのが現在の主流になっているんですよ。仕事で必要なのは、ハードなインテリジェンス。これは、たとえば相手を論破したり、1つの話を一貫して通したりする力のこと。
大塚:男性はどちらかというと得意な分野ですね。
植木:そうですよね。でも生活する上で意外と大事なのは、ソフトインテリジェンスです。私が読んだ論文では具体的に3つあると書かれていましたが、1つは「結論を先送りにする力」。
大塚:ああ、僕にないものだ。
植木:私にもない(笑)。2つ目が「話題を途中で変えても平気な力」。最後が「1回引き下がって策を練る力」。
つまり、一般的なビジネス上ではタブーなことばかりなんですよ。結論はさっさと白黒付けて、先送りなんてしちゃいけませんよね。途中で話もポンポン変えちゃいけないですし、引き下がってもいけない。でもこのソフトインテリジェンスっていうのは、生活上の賢さを意味していて、家庭生活には不可欠なんです。