米連邦準備制度理事会(FRB)、欧州中央銀行(ECB)、そして日銀は2020年、合わせて約8兆ドル(約830兆円)もバランスシートを拡大させた。世界の金融市場に激震が走った2008年9月以降、同程度の拡大には8年近くかかっていた。こうした債券買い入れの急増は、量的緩和(QE)を巡る議論や、QE実施国に財政的なコストがかかる可能性についての議論を再燃させた。だが、懸念すべき状況はかなり限られているようだ。理論的には次のような形になる。中銀が市中銀行から債券を購入すれば、その代金は銀行が金融当局に預け入れる超過準備として入金される。中銀はその超過準備に金利を支払う。ここ10年のように、債券ポートフォリオの市場価値が膨らむ期間では、それは中銀に利益をもたらした。