トクホではないが、ついにチョコレート製品のパッケージにも“効能表示”がつくようだ。といってもEUでの話。スイスに本拠地を置く世界最大のチョコレート製品企業バリーカレボー社が常々主張してきた「ココア・フラバノール(ポリフェノール)」の血管拡張作用が欧州食品安全性諮問機関に支持されたため。同社では正式認可を待って、チョコレート/ココア製品に効能表示をする予定らしい。
2000年以降に報告されてきたチョコレートの効能効果をざっと並べると、「血圧低下」や「血液サラサラ」あたりから始まって、この数年は「心不全リスクの低下」や「脳卒中リスクの低下」など循環器疾患の予防効果が言われるようになってきた。有効成分は前述のココア・フラバノールで、血管内腔の内皮細胞を弛緩させて拡げる作用がある。結果的に血流がよくなり、血圧が下がるというわけ。このほか、赤ワインには及ばないが抗酸化物質のレスベラトロールも含有している。
複数の研究を総合的に解析した結果では、ダークチョコレート摂取が最も多い人は、ほとんど摂取しない人と比較して心疾患発症リスクが37%、脳血管疾患では発症リスクが29%減少していた。この6月に英国の総合医学誌「BMJ」に報告されたオーストラリアの論文では、メタボリック症候群の人が取り得る最も安上がりな循環器疾患の予防手段として、1日100グラムのダークチョコレートを食べることをあげている。
とはいえ、チョコレートは高カロリー食の代表格。脂質も糖質もがっつり含有されている。大量に食べれば栄養バランスを崩し、よい作用も水の泡になりかねない。また、血管拡張作用が裏目に出て片頭痛を誘発する危険性もある。多くの研究者はチョコレートの効能効果を認めつつ、「チョコレート頼みの疾患予防」には懐疑的だ。やはり、地道な健康管理のご褒美に一齧りするくらいがちょうどよいかもしれない。
それにチョコレートが「健康食品」というのも何だか無粋な話。古今東西を問わず、チョコレートは愛の媚薬なのだから。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)