多くの白バイがBMWの理由

 メーカーがらみでいえば、白バイも興味深かった。最近のマラソンレースでは、オフィシャルカーとして環境とランナーに配慮した電気自動車が使われる。同じ発想で、BMWの電動スクーターが先導バイクに使われたのは興味深かった。

 なぜ日本製でないかといえば、日本のオートバイメーカーが電動バイク(とくに大型)の実用化にさほど熱心でなく、白バイに使えるような日本製電動スクーターがないからだとの指摘には、日本企業の一側面が見える気がした。ただ、すべてBMWだったわけではなく、区間によっては日本製の通常の白バイが使われていた。こんな話も、11時間も見る中では格好の話題だと思うが、スポンサーに関連する話題はできるだけ避けて通るという、つまらない傾向に支配されていた。

自由な言論を封じ込める、メディア主催系のイベント

 箱根駅伝といえば“国民的行事”のようなイメージに彩られているが、その実、出場は関東の大学に限定された“ローカルイベント”だという指摘がここ数年高まっている。全国の大学に門を開くべきではないか、という提言だ。高校野球の甲子園大会にしても、新聞社やテレビ局などのメディアが主催する(または深く関与している)イベントほど、自由な議論を封じ込める傾向にあるように感じる。11時間も大勢の視聴者がテレビ観戦しているのだから、「箱根駅伝は全国大会にすべきか否か」を議論するテレビ投票をするなどしてもよいと思うが、そんな気配はなかった。私は今年見ていて、スポーツ界でも「男女の格差是正」に取り組んでいる中、「女子選手にも箱根駅伝を」という声が上がらないのはなぜだろうと思った。「女子だって箱根を走りたい」という声はないのだろうか。

本当に「奇跡の大逆転」だったか?

 最後に、最も肝心なレース展開・レース分析についてもひとつ疑問を投げかけたい。創価大の快走が続き、素人が見たら確かに、「このまま逃げ切るんじゃないの?」と感じさせられた。だから「駒澤大が10区で奇跡の大逆転」と形容されてもウソには聞こえない。しかし、プロの目から見たらどうだったのか?

 まるで神がかったかのような6区から9区の快走を見ると、もしや「10区も?」と思わされても仕方がない。しかし、私はずっと、このまま逃げ切れたらそれこそ「奇跡だ」と思いながら見ていた。これまでの実績、他校の実力、地力を考えあわせれば、長い距離のどこかで、逆転劇が起こるだろうことは容易に想定できた。

 3分19秒の差は箱根駅伝では決して安全なリードとは言い切れない。追う方にすれば、「まだ可能性がある」「必ずチャンスが訪れる」と信じて走れる差ではないか。もちろん、前を行く走者が淡々と走れば逆転は厳しいが、調子を崩せば一気にその差は縮まる。そのことをほとんど実況では指摘しなかった。

 これが本当にスポーツ中継であるならば、上位各校の10区走者の持ちタイムやこれまでの駅伝での成績、走者としての特徴などを総合して、逃げ切りあるいは逆転の可能性をもっとスリリングに聞かせてほしかった。

 知りたいと言えば、2日目はずっと、青山学院の復路順位が気になった。原晋監督が復路優勝を狙うと宣言したとおり、6区から青山学院のランナーたちは着実な快走を見せた。見掛けでは判別できない復路だけの順位を知りたいと思いながら見た視聴者は少なからずいたのではないか。けれど、それほど頻繁に復路の順位をリアルタイムで教えてはもらえなかった。

 見たいものを見せない。知りたいことを教えない。レースの本質は曲げて、できるだけドラマチックに盛り上げる。このように、なんだかおかしなスポーツ中継が、箱根駅伝に限らず今年も幅を利かせるのだろうか。スポーツを見る目、楽しむ感性は、自分で磨くしかない。あるいはもう実況の音声は消すかBGMくらいにとどめて、ネットを頼りに自分なりの情報を入手し、分析、予測して楽しむスタイルを確立した方が興奮できるかもしれない。

(作家・スポーツライター 小林信也)