2020年以降、都内のミニシアターに勤めていた元従業員による、経営者へのパワハラ告発が相次いでいる。次々と露呈するミニシアターのパワハラ問題。その背景には何があるのか。映画配給会社アップリンクのパワハラ訴訟において原告側の代理人を務め、映画界のパワハラ問題に精力的に取り組んでいる馬奈木厳太郎弁護士に解説してもらった。(清談社 山田剛志)
劇場の理念とパワハラの
ズレに失望感
2020年6月、全国に3つのミニシアターを有する映画配給会社「アップリンク」の元従業員5名が、同社の取締役社長・浅井隆氏から日常的にパワーハラスメントを受けていたとして、損害賠償を求める訴訟を起こした。
また、11月には杉並区のミニシアター「ユジク阿佐ヶ谷」の元スタッフ数名が、経営陣から長期にわたり不当なハラスメントを被っていたことをSNS上で告発し、話題を集めた。
ミニシアターの業務と聞くと、チケットの受け付けや劇場の清掃といったルーティーンを思い浮かべる人が多いのではないだろうか。
しかし実際は、上映番組の編成やポスターの作成、イベントの企画から出演者のブッキングまで業務内容は多岐にわたり、意外にハードワーク。その上、最低賃金に近い給料しか保証されないところも多く、「一般企業に比べて労働条件が良くないのは事実」だと馬奈木氏は語る。