コロナ禍となり半年以上が経過したが、企業の対応には、いまだばらつきがある。リモートワーク体制構築の途上にある大企業や、早くも1月から完全リモートに徹していた企業。一方で原則出社を打ち出すIT企業など。特集『新しいマネジメントの教科書』(全18回)の#7では、業界や規模、社風によって対策が異なる中、その違いにある新しいマネジメントのヒントを伝えていく。(ダイヤモンド編集部 塙 花梨)
「リモート派」vs「対面派」の違いに見る
コロナ時代のマネジメントのヒント
「ウィズコロナ」や「アフターコロナ」などの言葉が広まり、コロナ禍での新しい働き方を考える動きが進んでいる。自分の会社はこれからリモート中心となるのか、コロナ前の対面中心に戻るのか、それとも併用していく形を取るのか――。未来の働き方を予測し、企業はそれに向けた対策や判断が必要になってくると同時に、従業員はその方針に合わせた働き方に適応しなければならない。
しかしながら、現状の出社体制は、企業によって驚くほどばらついている。緊急事態宣言が解除されて5カ月がたとうとしているが、いまだに企業の判断は揺らいでいるのだ。
出社体制の方針は、大きく二分されている。リモートワークをメインに考えている“リモート派”と、直接会うことを重視する“対面派”だ。
リモート派の大手企業といえば、みずほフィナンシャルグループだ。9月末に、東京都内にあるグループ内の中核3社の本社に勤務する1万2000人強の社員のうち、25%のテレワークを恒常化する方針を固めた。
また、ソフトバンクやメルカリなどのIT企業では、コロナ前はリモート勤務をする社員はほとんどいなかったが、現在はほぼリモートに。メルカリに至っては、出社率は全社員のうち5~10%ほどだ。
さらにグローバルカンパニーの日本支社であるユニリーバ・ジャパンは社員の健康を第一に考えて、2月から今まで一貫して、完全在宅勤務を徹底している。人事総務本部長の島田由香氏は「オンラインだからできないというのは言い訳だ」として、リモートでの快適な環境づくりに努めている。
やはり「会う」ことは不可欠なのか
GMOが考える“コミュニケーション貯金”理論
一方で、どんなにリモートで工夫を凝らしても、人と人が会って得られるコミュニケーションの情報量は、リモートとは比べものにならないことも事実だ。
一橋大学名誉教授の野中郁次郎氏も「コロナ禍になって以来、『いかに接触を絶つか』という話になっているが、これは本質的な人間の営みに反している」と語っており、「どこかのタイミングで直接顔を合わせ、お互いが持っている主観をぶつけることで共感すべきだ」と主張している。
企業でも同様の考えを持ち、宣言解除後に、「原則出社」を打ち出したところがあった。
1社目は、サイバーエージェントだ。ITに強い企業のため、リモート中心でも問題なさそうな印象を受けるが、 “チームでの熱量の高さ”を大切にする企業風土から、宣言解除後に一度リモート体制を解除し、原則出社の体制へ。その後の感染拡大を受け、現在は週に1回程度の出社体制となっている。
もう1社は、大手商社である伊藤忠商事である。岡藤正広会長が主張する「商社マンは人に会ってなんぼだ」という信念の下、宣言解除後に、事情のある社員以外は基本出社に戻した。ただしこちらも感染拡大後は再びリモート中心に変更し、柔軟な対応を進めている。
さらに意外なのは、日本では最速の1月27日の段階でフルリモートに踏み切ったGMOインターネットが、今は対面を重視していることだ。
現在は出社率50%という上限を設けつつも、原則出社の体制に切り替えているのだ。従業員に対するアンケートでは、およそ8割がリモートに対してポジティブな意見を持っていたが、それを押し切っての出社判断の理由は、トップが考える“ある方針”があったからだという。