ムリをかければムラが生じ、
ひいてはムダの発生原因になる

「3ム」で知られる「ムリ・ムラ・ムダ」の排除は、生産性の向上の重要な視点です。

 トヨタグループの内部でこの言葉が使われる際は多くの場合、3つのムは「ムリ・ムラ・ムダ」の順番に並んでいます。かつて自動車工場に在籍時に「『ムリをかければムラが生じ、ひいてはムダが発生する』もの。だから、この順番」と教えられたことがあります。

 会社がつぶれるかどうかの緊急時はともかく、平常時に、現場にムリな負荷をかけて見た目の数字の帳尻を合わせ続けるのは本来、おかしな話です。

 そもそもを考えれば、そのような非常事態に陥らないように手を打っていくことが経営の役割です。事情の如何にかかわらず、現場や組織に体力的なムリをかける状態が常態化すれば、早晩、どこかにしわ寄せがいき、ムラが発生し、企業内の様々なムダの温床になります。

 事業としては十分な利益が出ているにもかかわらず、各店舗に利益責任を課したために、赤字スレスレの店では、店の床のタイルがはがれていても修理をせずに放置されるケースが現実には起きます。

 来店したお客様にとっては、その店が赤字なのかどうかなどは関係のない話です。現場が収益確保を優先させ、万一、お客様がその店に不快感を覚えた場合は、お客様の頭の中にある店のブランドイメージを損ね、次回の来店確率は大きく下がります。

 一人の新規のお客様に店を認知してもらい、来店、再来店してもらうまでに、どれだけの手間とコストがかかるものなのか。

 創業者であれば肌感覚で理解している押さえどころが、絵に描いたスキームだけで理解した気になり、その重要さがどこかに飛んで行っているのです。