時代や環境変化の荒波を乗り越え、永続する強い会社を築くためには、どうすればいいのか? 会社を良くするのも、ダメにするのも、それは経営トップのあり方にかかっている――。
前著『戦略参謀の仕事』で経営トップへの登竜門として参謀役になることを説いた企業改革請負人が、初めて経営トップに向けて書いた骨太の経営論『経営トップの仕事』がダイヤモンド社から発売(1月13日)になります。本連載では、同書の中から抜粋して、そのエッセンスをわかりやすくお届けします。

現場への指示や責任の一方的な「丸投げ」は、事業の赤信号Photo: Adobe Stock

ある飲食チェーンでの不可解な出来事

 2、3年前に知人と2人で、ある住宅地の駅の側にある、食の安全にこだわりを持つ定食店チェーンで遅めの夕食を取った時のことです。私は焼きサバ定食を頼み、食事が運ばれ食べ始めると知人がこう言いました。

「あれ? それ、ホッケじゃないですか?」

 実は注文の際に「今日はホッケを食べたい気分だが、健康に良さそうなサバに」と迷ったこともあり、気にせずそのまま出されたものに箸をつけていました。

 念のため、オーダーをとってくれた学生アルバイトに見える男性を呼んで確認すると、彼はこう言いました。

「あ…、そうでした。で、どうしましょうか?」

 一瞬、こちらも戸惑ったものの、

「本当は、サバが良かったのですけどね」と答えました。

 すると、この男性はその場を動かずに「どうしましょうか?」を繰り返すばかり。

 しばらくすると、ホール担当のリーダー格の女性がやりとりの様子を見てやって来ました。事情を知った彼女は、「すみませんでした。すぐにサバをお持ちします」と、その男性を連れて戻られました。

 これで一件落着したと思ったのですが、実はこの後の展開が、この話の考えさせられるポイントなのです。しばらくすると、今度は厨房から40歳前後の店長らしき男性が現れました。

「サバのご注文だったということですが、どういたしましょうか?」

 と、先ほどの彼と行ったやりとりが再び始まりました。

 この店長らしき方も、先ほどの彼と同様「どういたしましょうか?」を繰り返すばかりです。

 こちらも、ことの顛末(てんまつ)を見届けたくなり、

「サバを注文しましたので、やはりサバが食べたいですね」と伝えると、

「かしこまりました」

 とその男性は厨房に戻り、しばらくして単品の焼きサバが運ばれてきました。

 運ばれてきたサバを食べながらテーブルの上の伝票を確認したところ、ホッケ定食に加え、サバ単品の追加オーダーが伝票に加えられていました。

 念のため先ほどのホールの女性を呼んで伝票を見せ、「これでいいんですよね?」と確認したところ、驚いた表情で「申し訳ありません」と彼女はサバの請求分を取り消しました。

 すでに気が付かれた方も多いと思いますが、この店は皆さんもよくご存じの定食チェーンの大戸屋です。

 この数年間、既存店の客数減少が止まらず、本業の営業利益も落ち込み赤字化して、創業家オーナーによる株式譲渡や株主総会の様子がマスコミに報道されるなどの迷走状態が続き、結果的にコロワイドのTOB(株式公開買付)により、経営権が移転することになりました。

 みなさんは、実際にあったこのエピソードから、この会社の中で一体何が起きていたと読みとりますか?