時代や環境変化の荒波を乗り越え、永続する強い会社を築くためには、どうすればいいのか? 会社を良くするのも、ダメにするのも、それは経営トップのあり方にかかっている――。
前著『戦略参謀の仕事』で経営トップへの登竜門として参謀役になることを説いた企業改革請負人が、初めて経営トップに向けて書いた骨太の経営論『経営トップの仕事』がダイヤモンド社から発売(1月13日)になります。本連載では、同書の中から抜粋して、そのエッセンスをわかりやすくお届けします。

どんな苦境にあったとしても、<br />流行りの経営理論や魔法の道具に<br />飛びついてはいけないPhoto: Adobe Stock

事業低迷の原因には共通項がある

 学校を出て以来、企業とその現場を「変える」仕事ばかりに携わってきました。

 最初の仕事はトヨタの各自動車製造工場が当時、初めて取り組んだ、コンピュータを使って一台ずつすべて仕様の異なる自動車がラインを流れる混流生産の指示を行う、ALC(Assembly Line Control)システムの開発・導入プロジェクトでした。

 その後、経営のあり方、改革のことを深く知りたくて、縁があったマッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。トヨタでのやり方が身についている自分には、違和感を覚えることもありましたが、経営の手法、考え方や、グローバルな標準となりつつあった米国式の経営など多くのことを学ぶことができました。

 マッキンゼーの後は、日本企業、外資系企業において、代表取締役社長、事業部長、営業責任者などの立場で、事業活性化やV字回復のための改革に取り組んできました。

 これらの経験からわかったことがあります。それは、企業が直面している低迷状態、あるいは苦境の多くは、「事業のトップ、創業者、あるいは企業のオーナーが、ほんのちょっとしたことさえ知っていれば、避けることができたことばかり」であるということです。

 そして、たとえ今、難しい局面にあったとしても、ほとんどの企業においては、それを乗り越えるシナリオを描くことができ、その実行の際の押さえどころも明確だということです。

 今の形で、事業の再活性化を請け負うようになり、さらに数多くの企業のトップマネジメントと改革に取り組むようになってから、その根にある問題点や押さえどころ、そしてその対応は、複合技が必要なケースはあっても、実は、企業ごとにはほとんど違いがないことは、確信に変わりました。