時代や環境変化の荒波を乗り越え、永続する強い会社を築くためには、どうすればいいのか? 会社を良くするのも、ダメにするのも、それは経営トップのあり方にかかっている――。
前著『戦略参謀の仕事』で経営トップへの登竜門として参謀役になることを説いた企業改革請負人が、初めて経営トップに向けて書いた骨太の経営論『経営トップの仕事』がダイヤモンド社から発売(1月13日)になります。本連載では、同書の中から抜粋して、そのエッセンスをわかりやすくお届けします。

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組織をいかに運営するかは、
トップ自らがイメージすべき

 小売業で考えれば、出店スピードがゆるやかな時は、店のマネジャーに丁寧に教育や指導を行うことができます。品揃えの判断力を持たせるだけではなく、経費管理の仕方も体得させ、店の経営者としての判断ができるようにしていくことは可能です。

 しかしそのステップもなしに、当座の利益確保を目的として、いきなり「経営感覚を磨くべきだ」と大義名分を立てて、「店舗に利益責任を持たせる」と言われても、店長は「具体的に、どうしたらいいのか?」と戸惑うだけです。

 事業における施策では、組織がどう動き、現場ではどう実践されるのかのイメージを事業の責任者であるトップ、あるいはプロジェクトの責任者などが頭の中に描いていなければなりません。

 いくら「店」という小さい単位ではあっても、突然、収益責任を負わせられれば、ことの優先順位を正しく判断できない店長が出てきます。

 お客さんを大切にしなければならないのはわかっていても、

「営業利益のために、経費削減を徹底するように」
「この店は食材のロス率が高すぎる」

 と怖い顔で迫るエリアマネジャーの顔が頭に浮かべば、顧客がいない営業時間中に店舗の一部電灯を消してしまう店長や受注のミスも何とか取り繕いたいと考える店長も出てきます。

 おそらく私が行った店の店長も、マネジャーの指示に実直に従ったのだと思います。

 そしてホールを仕切っていた女性は、それではまずいと考えて、従来から店に根付いている企業文化に沿った対応をしたのでしょう。

 飲食チェーンの中には、人件費率を下げるために、店を一人だけで切り盛りする、いわゆる「ワンオペ」が常態化し、過重労働の問題がマスコミで取り上げられたケースもあります。

 これは現場に「ムリ」を強いている状態で、こうなると、顧客の来店に切れ目がなければ、行きたい時にトイレにも行けず、アルバイトが熱を出して休んでしまった場合、店外からの応援でもなければ店長は休みを取ることさえできません。