運用・金融業界は手数料を欲張るな
投資家から金を奪うな

 投資家が手にするのは、市場で得られたリターンからコストを差し引いたものだ。そして、市場で得られるリターンは不確実なものだが、コストは確実にマイナスに働く要因だ。コストが安い運用商品を選ぶことは、投資家が自ら実現できる運用の改善行動なので極めて重要だ。

 しかし運用・金融業界は、顧客にコストの重要性を知らせるよりも顧客にコストを支払わせることに対して圧倒的に熱心だ。

 ボーグル氏は本書で「ファンドマネージャーが自分は万能の魔法使いだとどんなに主張しようとも、彼らが現在やっていることは、投資家から金を奪うことに過ぎない」と怒りを込めて指摘している。加えて投資家は、ファンドマネージャー(運用会社)に対してだけではなく、投資アドバイザーやファンドを販売する金融機関などにも巨額のコストを支払っている。

 本書にあってボーグル氏の第1のメッセージは、運用・金融業界に対して顧客に支払わせるコストから得る利益について、欲張りすぎるな、「足るを知れ!」ということだ。

 運用・金融業界の人々は、メッセージを受け取ったくらいで自分の利益追求に節度を持つような人々ではない。ただ、ボーグル氏の後輩たちはインデックスファンドという低廉で優れた運用商品のビジネスを実行することを通じて現在、インデックスファンドのシェアを拡大するとともに、運用業界の手数料水準を引き下げつつある。

 まだ道半ばだが、第1のメッセージにあって、ボーグル氏が仕掛けた戦いは勝利を収めつつあるように見える。

全てのビジネスマンよ、良き職業人たれ
個人の利益を強欲に追求するな

 本書の第2の「足るを知れ!」は、ビジネスマンに向けられている。

 金融を含む多くの企業のビジネスマンが個人の経済的な利益を強欲に追求するのは、見苦しいばかりでなく経済に問題をもたらしている――。そのことを、ボーグル氏は強く指摘する。

 例えば、企業の最高経営責任者(CEO)たちは、一体いくら報酬があれば「足る」のかと問いかけている。近年の米国企業のCEOたちは、主に自社株のストックオプションを通じて巨額の報酬を得ている。

 実は、金融業界のトレーダーやセールスマンもヘッジファンドのファンドマネージャーも、そして企業のCEOも、金融論的には「オプション」を通じて自らの報酬の拡大を目指す仕掛けを持っている。