杭州の蔦屋書店は「天目里」というおしゃれな店が並ぶ場所にあり、この男性と同じく建築や美術関係者、経営者などが頻繁に通うところだという。男性は「店で友人とばったり出会ったこともある」と話していたが、私の別の知人(大学教授)もSNSに蔦屋書店に行ったことを投稿していた。オープンして3カ月足らずで、早くも地元文化人の「定番スポット」となりつつあるようだ。

 一方、12月末に上海にオープンした2号店は長寧区の築100年になる建物をリノベーションした文化施設「上生・新所」内にある。売り場面積は約2000平方メートル。2フロアあり、1階は「知性を身に付ける」をテーマに一般書籍を、2階は「美意識を磨く」をテーマに美術関係の書籍や工芸品などが販売されている。最も高価な書籍は日本円にして600万円もするもので、取り扱う書籍は全部で5万点。その4分の1が日本関係の書籍だという。

 こちらも杭州同様、感度の高い文化人やビジネスパーソンなどが訪れる人気のスポットになっている。

 日系の書店という物珍しさもあるだろうが、ネット通販が日本よりも進んでいる中国では、ここ数年、書店数が増え続けている。中国の統計によると、2019年の書店数は全国で約16万店となり、過去最多だ。

おしゃれな
リアル書店の良さ

 なぜ今、リアル書店が増えているのか。前述した建築家はこう話す。

「急いでいるときはアマゾンや『当当』という中国のサイトで書籍を買うこともあるのですが、書店に行く目的はお目当ての本を買うだけでなく、ほかにどんな本が発売されているか、最近のトレンドは何か、掘り出し物はあるか、という楽しみがあるからだと思います。書店に行くこと自体が楽しい。SNSで話題になっているベストセラー以外の本や、電子書籍化されていない希少本を見つけ出すことにも喜びを感じます。ついでに書店の中のカフェでお茶も飲めます」

 日本人が書店に行くのと同様、中国人も書店にわざわざ行くのは同様の理由があるようだ。だが、中国ではネットが急速に発達した2010年頃から数年間、書店の倒産が相次いだという時期があった。

 中国の書店といえば、古くからある公営の「新華書店」が有名で、全国の大都市にあったが、十数年ほど前までは「(電灯が)暗い」「ほこりっぽい」「古くさい」というイメージがあり、「おしゃれ」とはほど遠かった。