SDGs(持続可能な開発目標)のSとDに当たるサステナブル・デベロップメント(持続可能な開発)のの起源は、14世紀の林業経済の概念にあると言われています。1346年ヴァロワ朝のフランス国王フィリップ6世が公布した「開発する森林は持続的に良い状態で保つようにしなさい」という林業規定です(*1)。これは時の権力が国民に強いた命令でした。ところが650年以上を経た今では、国民が権力(政府や経営者)にサステナブルな社会づくりを迫るに至ってます。(Nagata Global Partners代表パートナー、フランス国立東洋言語文化学院非常勤講師 永田公彦)
8割の国民が自分事として動き出す
2015年パリ協定とSDGsの採択以降、欧州では市民による環境負荷を減らすための日常的な行動が急速に広まり、社会のメインストリームとなっています。
フランスでもしかりです。ADEME (エネルギー管理庁) が全国の約6004人を対象に実施した2019年度調査(*2)によると、国民の73%が地球環境の救済を緊急課題と捉えています(うち60%が「緊急」、13%が「すでに手遅れ」と認識)。そして80%が環境負荷を減らすための消費行動を日常的にしているといいます(うち13%が全面的に行動し他者にも勧める、67%が日常生活で何かしらの行動をする)。また59%が環境や社会にとって意味のある仕事に就きたいと考えています。
こうした行動が特に顕著に表れているのが食品等の買い物です。エコバッグ持参は当たり前で、ここ数年はパッケージフリーの「量り売り」も急拡大。何の包装もされていない裸の商品を、来店客が持参する空き瓶等に必要な分だけ入れて買うものです。対象商品は、生鮮食品を除くオーガニックな食品(米やパスタ等の穀類、豆類、種子、菓子、果物等の乾燥食品、調味料、油、飲料)とトイレタリー商品(シャンプー、石鹸、洗剤等)です。このパッケージフリー専門店は全国400店舗に拡大し、オーガニック専門店の9割、一般スーパーマーケットの7割が量り売りコーナーを設置しています(同業界団体2019年調査)。
こうした「ゼロ廃棄・ゼロプラスチック」以外にも環境負荷を減らすためのさまざまな消費行動が加速しています。例えば、大手流通離れです。大量生産されグローバルに流通する大手食品メーカー商品から、地元産の商品へのシフトです。しかも、36%が生産者から直接購入するという流通カットも増えています。また、肉食を減らしたり、野菜果物では通年で店頭に並ぶものよりも季節のものを好んで購入するなどの動きが加速しています(前述のADEME2019年調査)。
*1 Clémant,V.(2004)
*2 GreenFlex-ADEME『Baromètre GreenFlex-ADEME 2019』