実際、コロナ前から子育てや介護のために地方に移住するような働き方をしたいが、それを会社が認めてくれないからと転職相談に来た人がいた。ただ、その方もライフスタイルへのフィット感だけでなく、自分のキャリアをグローバルに広げたいという中長期的な目標を持っていた。つまり、目の前の家族とのライフスタイルも自分のキャリアデザインも大事にしたい人を惹きつけるような魅力が、これからの企業には必要になる。

変化の時代に人を惹きつける
企業に必要な「4つのP」とは?

――こうした時代において、企業が社員や求職者を惹きつけ続けるには、どのようなことを重視すべきか。

 人が共同体へ参加するための誘因としては、「4つのP」が必要だといわれている。4つのPとは「パーパス(目的・理念)への共感」「プロフェッション(スキル)」「ピープル(豊かな人間関係・風土)」「プリビレッジ(組織で得られる特権・報酬・待遇)」のことで、変化の時に社員を惹きつけるために企業は、これらを重視しなければならない。

 人によって重視するポイントは異なるが、例えば次世代経営者やトップエンジニアを目指す人は、目標への共感など「理念・ビジョンの明快さ」「戦略・目標の将来性」「事業・商品の特徴」といった将来への希望が見える点が重要視される。

 特権に関しては、コロナ禍でいち早くテレワークを導入したり、副業を認めたり、変化の時に一人一人の従業員に向き合うことが企業側にとって重要な課題になっている。

 現在は、以前よりも事業が短命化しているため、企業は事業自体を時代に合わせて変えなければ生き残れなくなっている。しかし一方で、長くなっているのが個人の職業人としての寿命で、個人と企業の寿命が逆転している。終身雇用が難しくなったからこそ、終身成長とエンプロイアビリティ(雇用され得る能力)、つまりどんな会社からでも欲しいと思われる能力を磨ける会社にいるのが働き手にとっての長期戦略になる。企業と個人の両方に、ダイヤモンドのような「永遠の輝き」が求められるのがこれからの時代だ。