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9月末に懸念されていた最悪の事態は、とりあえずは回避された。スペイン国債の格下げのことだ。
スペイン国債の格付けをめぐっては、米格付け会社のムーディーズが9月中に投資不適格級まで引き下げる可能性を示唆していたが、10月中への延期を決定した。
一方、9月28日に公表されたスペインの14銀行に対するストレステスト(健全性審査)結果も、資本不足合計額は前回の620億ユーロを下回る537億ユーロにとどまった。
ただ、スペイン政府が資金繰り危機に陥るリスクが払拭されたわけではない。金融支援を獲得できるか、ひいてはECB(欧州中央銀行)がスペイン国債を買い入れるかが不透明なままだからだ。
9月27日、スペイン政府は2013年予算案を発表、支援獲得を視野に新たな財政赤字削減策を盛り込んだ。昨年12月に発足したラホイ政権にとって、実に5回目の緊縮策である。
「スペインに勧告した内容を上回る措置だ」。欧州委員会のレーン委員が前向きな評価を示すと市場はこれを好感。「あとはスペインが支援を要請しさえすれば受けられる」(市場関係者)との見方が広がった。実際、米国株は反発し、ユーロもドル、円に対し上昇した。
ところがである。この見方には「2つの誤解がある」(岸田英樹・野村證券シニアエコノミスト)。
まず、欧州委員会が評価したのはスペインの緊縮策ではない。欧州委員会のステートメントによれば、(1)財政監視機関の創設と、(2)若年層の雇用促進といった労働市場改革、これら2つの措置を評価したにすぎない。
さらにいえば、そもそもルール作成の官僚組織である欧州委員会には、支援を決定する議決権がない。支援主体はあくまでユーロ圏各国が拠出する基金、ESM(欧州安定メカニズム)であり、決定権はユーロ圏17カ国財務相にある。彼らの全会一致が原則なのだ。