『独学大全──絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』が10万部を突破! 本書には東京大学教授の柳川範之氏が「著者の知識が圧倒的」、独立研究者の山口周氏も「この本、とても面白いです」と推薦文を寄せ、ビジネスマンから大学生まで多くの人がSNSで勉強法を公開するなど、話題になっています。
この連載では、著者の読書猿さんが「勉強が続かない」「やる気が出ない」「目標の立て方がわからない」「受験に受かりたい」「英語を学び直したい」……などなど、「具体的な悩み」に回答。今日から役立ち、一生使える方法を紹介していきます。(イラスト:塩川いづみ)
※質問は、著者の「マシュマロ」宛てにいただいたものを元に、加筆・修正しています。読書猿さんのマシュマロはこちら
[質問]
健康上の理由で体重を減らす必要があるのですが参考になる書籍はないでしょうか。
まず「ダイエット」ではなく「肥満」で検索しよう
[読書猿の回答]
これは「肥満」で検索すると専門情報に当たるんですが、「ダイエット」で検索するとろくな情報が見つからないという、探しものの例題になる事案です。
出典が明らかで、生理学から行動療法まで扱った良い本があったのですが、さすがに古いんで、紹介するのを躊躇しました。同朋舎出版の『肥満(メンタルヘルス・シリーズ)』です。
日本語に訳されるといいなと思っているのは、Thinking in Circles About Obesity: Applying Systems Thinking to Weight Management.です。因果ループ図というものを駆使して肥満に挑んでいます。
次の2つの図を見てください。
上の図(Simplistic View):シンプルでは普及しているがダイエットについての間違った見方
下の図(Reality):いくつもの因果ループを含んで分かりにくいがその分リアルな見方
上の図は、取り入れるエネルギー(カロリー)と消費するエネルギー(カロリー)のバランスが、体型や余剰エネルギー(カロリー)を決定する、という、原因と結果が直線的に結びついたリニアな問題の見方に基づいています。たとえば、同じ努力をすれば同じだけ体重が減るはずだという誤った結論は、こちらの見方に基づくものです。
しかし消費するエネルギーは、他の要素によっても左右されます。基礎代謝量は体重におおむね比例します。これによって条件が同じなら、体重が減るほど、減り方はゆるやかになります。他にも、取り入れるエネルギー(カロリー)が増えれば、それを消化吸収するのに必要なエネルギーも増えます。こうした因果関係のループがあるために、同じ努力をすれば同じだけ体重が減ることにならないのです。
(※図は、Thinking in Circles About Obesity: Applying Systems Thinking to Weight Management.より引用)