『独学大全──絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』が10万部を突破! 本書には東京大学教授の柳川範之氏が「著者の知識が圧倒的」、独立研究者の山口周氏も「この本、とても面白いです」と推薦文を寄せ、ビジネスマンから大学生まで多くの人がSNSで勉強法を公開するなど、話題になっています。
この連載では、著者の読書猿さんが「勉強が続かない」「やる気が出ない」「目標の立て方がわからない」「受験に受かりたい」「英語を学び直したい」……などなど、「具体的な悩み」に回答。今日から役立ち、一生使える方法を紹介していきます。(イラスト:塩川いづみ)
※質問は、著者の「マシュマロ」宛てにいただいたものを元に、加筆・修正しています。読書猿さんのマシュマロはこちら
[質問]
世の中に本があり過ぎて、時間がたりません
最近、人生で読める本の数と図書館の蔵書の数の比の画像を目にしました。
思ったのはどうあっても全てを知る前に死ぬし、本を読んでるだけでは何もできない、でも色々知りたい出来るようになりたい、という我儘でした。
そこで優先順位をつけるなりやらないこと学ばないことを決めるなりしようと思ったのですが、考えてるうちにあれもこれも考えてしまい結局失敗してしまいます。
なにかうまいやり方はないでしょうか?
「読めない痛み」を知る人こそが本読みである。
[読書猿の回答]
本読みとは、自分が読むことの出来ない膨大な書物が世界にあると知る人、痛みとともにそのことを承認し、その認識と痛みが知的な謙遜と好奇心の両方を支える人なのではないか、と思っています。
私の好きなマンガのひとつ、坂田靖子『バジル氏の優雅な生活』で、主人公バジル氏のところに来たばかり少年ルイに英語や勉強を教えるエピソードがあります。好奇心が止まらなくなって夜更かしして読み続けるルイに対してバジル氏がこう言います。
「書庫の鍵をあげよう。足りなければ図書館に行くといい。お前が知りたいと思う答えの半分は本の中にある」。
「半分だけ? 残りの半分の答えは?」
「それはまだ誰も知らない」
「いつになったら全部の答えが出るんですか?」
「さあ……どうかな。何かがわかるとまた新しい謎が出て来るし……」
「じゃあいつまでたっても半分しかわからないんですね」
「分からない事の方が人間の知識なんだよ。わかりきった事になんか誰もわくわくしないからね」
「世界は、謎に満ちているんだ」
(花とゆめコミックス版 3巻「ロンドン橋」)
とはいえ、世界の書物の殆どが読めないのだとしても、私達の知的好奇心、知りたいという気持ちは止まりません。
そこで実践的には「来たバスに乗れ」ということになるのですが、自分の目下の関心から引き寄せた眼の前にある一冊を読むこと、そこから広がる無数の書物をできるかぎり追いかけること、これらを命ある限り繰り返すことしかないのではないでしょうか。