なぜコロナで日本の医療崩壊が起きるのか写真はイメージです Photo:PIXTA

日本は病床数だけでなく、医療従事者や集中治療室(ICU)の数においても、欧米先進国と比べて決して少なすぎるというわけではない。にもかかわらず、米国の29分の1の感染者数で、なぜ「医療崩壊」が叫ばれるのか、各国のデータを分析して明らかにした。(名古屋商科大学ビジネススクール教授 原田 泰)

 新型コロナウイルス感染症の拡大によって医療崩壊になると盛んに言われているが、私は正直なところ、なぜ医療崩壊するのか不思議だった。

ICUは他の先進国より少ないが
感染者数、死亡者数はもっと少ない

 これは本欄2020年5月9日掲載の「コロナの感染者数は今後どうなる?東京と愛知の推計値に大きな格差」の中で「医療崩壊はなぜ起きるのか」と題して論じたことなのだが、日本の病床数は世界的に見て多い。

 例えば、人口1000人当たりの病床数は、フランス5.9、ドイツ8.0、イタリア3.1、英国2.5、米国2.9であるのに対し、日本は13.0、韓国は12.4である(OECD.Stat)。財務省と厚生労働省は、世界的に見て異常に多い病床数を減らせと言ってきたが、それができなかったことが、コロナ禍においては結果的に幸いだったと思っていた。普段なら無駄と言われていたことが危機の助けとなりうる。日本の企業は、無駄に現預金を積み上げているといわれていたが、コロナの経済ショックに対してはバッファーになっているのと似ているかもしれない。

 ところが、病床はあっても、集中治療室(ICU)が足りないのでコロナには対応できないという。人口10万人当たりの集中治療病床数は、フランス11.6、ドイツ29.2、イタリア12.5、英国6.6、米国34.7であるのに対し、日本は7.3、韓国は10.6である(Niall McCarthy, “The Countries With The Most Critical Care Beds Per Capita” Statista, Mar 12, 2020) (https://www.statista.com/chart/21105/number-of-critical-care-beds-per-100000-inhabitants/)。