だが、北朝鮮が「決議案に賛成しろ」などというはずはない。つまり、文在寅氏は初めから北朝鮮人権決議案に否定的なのである。

 韓国国会では、対北朝鮮ビラ散布禁止法が成立した。しかし、この法は政府傘下の機関でさえ、「韓国の憲法に違反する可能性がある」と指摘している。さらに「市民的・政治的権利に関する国際規約」に反することは多くの国が指摘している。米国では、議会の聴聞会開催を検討しているほどである。

 韓国人として国際機関の最高位にあった潘基文(パン・ギムン)前国連事務総長も「北朝鮮の要求に屈した反人権法として国際社会から非難を招いている」「適切な措置によって修正されなければならない」と批判している。

 このように国際的な非難が広く沸き起こる中でも、文在寅政権にひるむ様子はなく、南北分断という特殊な状況を説明して乗り切ろうとしている。

 翻って、元慰安婦問題に日本はどう対応するか。日本側がこれまで誠意ある対応をしてきたにもかかわらず、韓国側はこれに納得することなく、何度もちゃぶ台返しを繰り返し、問題の解決を妨げてきた。そして、そのたびに日本の「反人権行為」を非難している。

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 このようなご都合主義の人権論者が文在寅氏とその周辺にいる元運動圏(左派の市民学生運動勢力)の人々である。前述の「ネロナンブル」の体質が歴然と表れたのが、北朝鮮と元慰安婦に対する対応であろう。

 バイデン氏は「慰安婦合意」について、自分が合意に貢献したという思い入れがあるはずである。そして、それを無効にした文在寅氏に対して快く思っていないはずだ。したがって、問題解決のためには、韓国が原点に立ち戻る以外ないことも理解してくれるだろう。

 米国の国内世論に対する働きかけを強めることは重要であるが、まずバイデン氏に働きかけて韓国への圧力を強めてもらうことが先決であり、それは同時に米国の国内世論にとっても効果の大きいやり方である。

(元駐韓国特命全権大使 武藤正敏)