政局が強める政策プレッシャー

 マクロ政策の先行きが見通しにくくなっている。背景にあるのは政治だ。9月21日の民主党代表選では野田首相が再選され、第3次改造内閣を編成した。26日の自民党総裁選では石破氏との決選投票の末、安倍氏が逆転勝利を収めた。

 野田内閣で新たに経済財政担当大臣を務める前原氏は、「金融緩和の手段として日銀は外債買入オペも検討すべきだ」との持論を展開し、今月5日には金融政策決定会合に出席した。

 また安倍氏は総裁選中、「デフレから脱却するまで消費増税を先送りするべきだ」「日銀は物価上昇率2~3%を目指すべきだ」と、財政・金融政策に対して拡張的な運営を求めた。

 そもそも自民党は6月に「国土強靭化基本法案」を国会に提出し、第一段階として当初3年間で15兆円の追加投資を謳っていた。民主党代表選と自民党総裁選は財政・金融政策に対する政治のプレッシャーを一層強めるきっかけとなった。

「波の高さ」と「波の拡がり」
で見る公共投資

 しかしここは、冷静に政策効果を見極める必要がある。自民党の国土強靭化政策を踏まえると、財政政策については公共投資が引き起こす「波の高さ」と「波の拡がり」が焦点となる。

「波の高さ」とは、公共投資の追加がどの程度GDPを押し上げるかを見たもので、マクロ経済学では「乗数」と呼ばれる。たとえば、GDPの1%に相当する公共投資の追加によって、それがなかった場合よりもGDPが1年目に1.2%、2年目に1.4%増えるとしよう。このとき公共投資の乗数は1年目1.2、2年目1.4となる。

「波の拡がり」とは、公共投資の追加によって、どの程度幅広い産業の経済活動が刺激されるかを見たものである。これは、産業連関表に基づく付加価値誘発係数や生産誘発係数などで表される。