焼肉ライク渋谷の店舗「朝焼肉」や「昼飲み」によって、時短で夜の儲けが減る分を日中に取り戻そうとする飲食店の取り組みが注目されている Photo:JIJI

「朝焼肉」は体にいい?
コロナ禍で始まった集客の試み

 日本マクドナルドの創業者・故藤田田さんによれば、朝からステーキを食べるのが欧米人だと言います。パワーブレックファーストといって、忙しいエグゼクティブは朝食も人脈づくりのために活用し、高級レストランで知人と一緒に食べることが多いそうです。藤田さんもそんな機会に、アメリカ人のパワフルなCEOが朝からステーキを注文するのを見て、そう感じたそうです。

 ひとり焼肉業態で知られる「焼肉ライク」が「朝焼肉」を始めたというニュースを耳にして、そんな藤田さんの話を思い出しました。決して否定的な意味ではありません。コロナをきっかけに、新しい行動が始まっています。その観点から朝食の習慣を見直すというのは、悪い話ではないと思います。日本人だって、朝から焼肉、ないしは朝からステーキというのはアリです。

 以前、医師の知人からアドバイスしてもらったことがあります。「朝食は食べたほうがいい。しかも直感に反するかもしれないけれど、炭水化物は減らしてたんぱく質と脂肪分をとったほうがいい」というのです。理由は、朝から血糖値を高めないほうが仕事にも健康にも良いからだそうです。だとすれば、ご飯やトーストよりも朝焼肉は健康に良いかもしれません。

 焼肉ライクに話を移すと、朝焼肉が始まった理由は明らかに新型コロナと関係しています。首都圏で緊急事態宣言が発出されたのを受けて、1月8日から対象地域の飲食店は営業時間を20時まで、アルコール提供を19時までに短縮することになりました。これは国や都の要望を受けた対応で、多くの飲食店が同様の動きをしています。

 東京都では、中小企業が経営するチェーン店に関して、20時で閉店する飲食店には2月7日まで全面協力する場合、1店舗あたり1日6万円の時短協力金が出るようになりました。最大で1店舗につき1カ月186万円になるわけで、今回の新しい支給ルールにより、中小のチェーン店はずいぶん助けられることになりそうです。

 とはいえ、都心の中規模店舗では家賃として月100万円は出ていきますし、店舗あたり10名前後にのぼる固定従業員の生活もあります。大企業が運営するチェーンにも協力金が出されることになりましたが、中小より条件は厳しいです。いずれにしても、店側はただ時短をしていてはジリ貧に陥るため、追加で稼ぐ必要がどうしても出てきます。