【ツビッカウ(ドイツ)】フォルクスワーゲン(VW)は自動車業界最大の賭けとなる電気自動車(EV)に5年の歳月と500億ドル(約5兆1800億円)近くを費やしてきた。新型EV「ID.3」が組み立てラインから出てくる中、ヘルベルト・ディースVW最高経営責任者(CEO)と来賓のアンゲラ・メルケル独首相は期待を膨らませて立っていた。ID.3は米テスラのEVに対抗するドイツ待望の車だ。
約1年前にVWの主力EV工場で行われたそのイベントは「内燃機関からEVへの組織的なシフト」を意味するものだった、とID.3の開発を指揮するトーマス・ウルブリッヒ氏は語った。
しかし、その車は宣伝通りには動作しなかった。
走ったり、角を曲がったり、急停止したりすることはできた。しかし、VWが約束していた派手なハイテク機能は欠落しているか、壊れていた。同社のプログラマーは、車のソフトウエアを遠隔操作で更新する方法をまだ見いだしていなかった。フロントガラスに速度や方向などのデータを表示するはずの未来的なヘッドアップディスプレー(HUD)も機能しなかった。その他にも何百ものソフトウエアのバグが初期の所有者から報告され始めた。