そこで、「株価が何倍にもなる銘柄にたどり着くには、何か法則がある」と考えるようになりました。そして「それは実績を分析することで、そうした銘柄を見いだす確率を上げているのではないか」と思い至ったのです。
ファンドを分析してわかった
4つの特徴
この仮説を確かめるために、ファンドに含まれる日本企業をリストアップし、過去からの業績やバリュエーションを確認しました。
ファンドには、日本株も含まれていましたが、日本株といっても、その多くは中小型株です。「いったいこの会社は何の事業をしているのか?」とさっぱりわからないような銘柄もありました。日本人でもこのざまです。
しかし、1つだけはっきり見えてきたことがありました。それは、ファンドに組み入れられている銘柄の過去の業績を見ると、以下のような共通項が浮かび上がってきたことです。
・毎年の業績のブレはあるが(つまり減益もある)、当期純利益の赤字がない企業が多い
・バランスシートを見ると、比較的財務体質のよい企業(たとえば株主資本比率が高い銘柄、見方を変えれば借入比率の小さな銘柄)が多い
・ROEが高い銘柄が多い
・バリュエーションが安い銘柄が多い
こうしたリバースエンジニアリングの結果について、日本人で中東の巨額資金を運用してきたファンドマネージャー経験者に聞いたことがあります。このファンドマネージャーは、「ブルーチップ(優良株)投資」と呼ばれる優良株への投資で大きなリターンを上げてきた投資家です。
彼のコメントで最も印象深かったのは、「過去の実績がしっかりしている会社が将来もよい結果を残す可能性は、過去に実績のない企業や、過去に冴えない業績しか上げていない企業に比べると高い」というコメントです。このコメントを最初に聞いたときは、「当然じゃないか」と思ったものです。
しかし、株式投資では、将来成功する可能性がより高い銘柄に投資をするというのが鉄則です。であれば、会社の将来「予想」よりも過去「分析」に時間をかけるべきだと考えが変わっていきました。
「アナリストの将来予想はあてにならなない」という指摘はよく耳にします。私自身、企業の業績予想をする中で、現時点で入手できる情報や調査をもとに最大限の努力をして予測してきました。しかし、マクロ経済環境や市場環境は時々刻々と変化します。そうした変化し続ける「動的」要因を完全に織り込んで予想するというのは不可能です。
ところが、過去の業績や財務内容という「静的」内容を分析する場合は、時間を費やした分だけ企業に対しての理解が深まります。その点に関しては、自分以外の市場参加者に対する優位性を高めることができるでしょう。