機関投資家の競争優位は
どこにあるのか?

 先の日本人ファンドマネージャーに、「過去の公開情報を分析するだけであれば誰にでも(今では機械も含まれるでしょう)できるので、機関投資家の競争優位はどこに残るのでしょうか」と質問を続けました。

「過去の業績がよかった企業は、株式市場も効率的なので、この瞬間においても評価されている。だから、よい銘柄であっても、いつも投資妙味があるわけではない。したがって、ブルーチップでも、いつも買いというわけではなく、どのタイミングで買うのかが重要。常に自分で買いたい銘柄のリストと買いたい株価(目標株価)があるのが理想だ。その準備ができているかどうかがプロとアマの大きな違いだ」といわれました。

 では、どのようなタイミングが買いなのかと質問をすると、次のように返ってきました。

「あまり教えたくはないけれども、『減益』はチャンスであることが多い。その減益が企業固有の原因によるものなのか、もしくは景気によるものなのかを見極める必要がある。仮に景気によるものであれば、絶好の買いのチャンスになる。株式市場はブルーチップの『減益』にとくに厳しいが、それは大目に見ていい。ただし、景気が悪くなったからといっても最終赤字はダメだ

 そして、なぜ最終赤字はダメなのかも質問しました。

「株主資本が棄損するからだ。ブルーチップの神髄はROEの水準が高く、株主資本が毎年積み上がることにある。株主資本が積み上がる中で、株価の上下はあるが、その底値が切り上がっていく。BPS(1株当たり純資産)が切り上がってくると、株価の下値も切り上がっていく。だから、過去の利益動向や減益の理由を調べるのには意味がある。ROEの水準が高ければ、株主資本が積み上がるペースが速いことは簡単に理解することができるだろう」

 長期投資を前提とする投資家にROEを重視する人が多いのは、こうした継続的な利益の積み重ねが株主資本の拡大をサポートすることを知っているからです。世界で最も有名な投資家といわれるウォーレン・バフェットもROEにこだわることで知られていますが、これも同じ理由です。

 このように、パフォーマンスがよいファンドの銘柄群をリバースエンジニアリングすることで、世界で成功した投資家がこだわるポイントが「業績」や「ROE」という企業の「過去」であることがわかります。

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