『チェンソーマン』は筆者が個人的にジャンプで毎週の連載を特に楽しみにしていた作品(昨年12月にいったん完結。第2部連載開始の予定あり)の一つである。それまでジャンプの売れ筋マンガでおおむね踏襲されてきたヒーロー像やストーリー展開と、本作品のそれらが大きくかけ離れ過ぎていて、連載開始当初は打ち切られやしないかと冷や冷やした。

 藤本タツキという作者の非凡さは『チェンソーマン』以前の作品からずっと際立っていて、たとえば初の連載作品だった『ファイアパンチ』(少年ジャンプ+)は人類が飢餓に苦しむ世界が舞台で、肉体の再生能力を持った主人公が自分の腕などを切断して、村人に食肉として分け与えたりするのである。

 こうした設定だけでなく展開もすさまじい作品であって、「この作者が少年ジャンプに連載するなんて一体どうなってしまうの!」と筆者などは心配を装いながら悦びの中で悲鳴を上げていたが、今こうして、すご腕書店員さんにピックアップされるくらいの注目作品になっていることがファンとしてうれしい。

 ちなみにこの連載の編集担当(女性)に聞くと、彼女が行くネイルサロンでネイリストのお姉さんから『チェンソーマン』をオススメされたそうで、そのような話を聞くと男性のみならず女性読者も獲得しているようだ。アニメ化も決まり、今後が一層楽しみな作品である。

たかがマンガと侮るなかれ
ハッとさせられるシーンのるつぼ

 一方、書店員えい子氏による女性向けマンガ、1つ目は『ミステリと言う勿れ』(著者:田村由美)である。少女マンガ(というくくりも近年はだいぶあやふやになりつつあるが)にあまり明るくない筆者もこれは読んだことがあった。

「真実は人の数だけある。多くの価値観を受け入れていく時代に、自分の心を柔軟にしてくれる主人公が人気の予感…!

 一見事件に関係ないような雑談や、豆知識的な情報から、事件が少しずつほぐれて解決していく様子はまさに新感覚。

 ミステリのお約束をぶった切る、ミステリのようでミステリじゃない不思議な世界観に、ハマる人が続出しています!」

【30~40代男性へのオススメポイント】

「これぞ男性にも読んでほしい漫画です。恋愛要素がほぼないので読みやすく、事件を解決する流れの中で、対人関係や仕事・子育てといった幅広い生き方のヒントが詰まっています。誰かに話したくなる雑学もたくさん描かれています!」(※書店員えい子氏のコメントより抜粋)

 本作品は「謎が解明されていく」という点を見れば“ミステリ”といえるが、作品タイトルにある通り“ミステリ”とだけ称するには、内容があまりにも鋭い。

 主人公が世間で常識とされているような考え方を否定し、新たな考え方を提示し…といったことが繰り返されつつ謎の真相に迫っていくのだが、この主人公の言動が、あまのじゃく気質の中年筆者をしてかなり鋭いとうならせるものなのである。すなわち、主人公にいちいち説得力があり、これが作品の面白さにつながっている。

 話の主目的である謎も気になるのだが、主人公の洞察や言動にこちらがうなって感心している間にも物語はテンポよく展開していく。いわば“ミステリ”部分に関して油断しているそうした瞬間、サッと真相が明らかにされて、「えっそうだったの!?」とまたうならされる。作者の手のひらで転がされていることが自覚でき、そしてそれがとても楽しい。実に目が離せない作品である。

 男性向け・女性向けのそれぞれ2作品は後編で詳しく解説しよう。ぜひチェックしてほしい。

>>【後編】に続く

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