新型コロナウイルスの感染拡大は、このうち3つめの「複雑な問題」に該当する。ところがトランプ政権は、これを「明らかな問題」か「込み入った問題」、つまりコントロール可能な問題だと判断した。それが感染者数を指数関数的に増やすことにつながったといえる。政策の失敗は社会的弱者を直撃する。社会不安は問題の連鎖を招き、「Black Lives Matter」のような抗議運動にまで発展した。

「複雑な問題」と「混沌とした問題」は、何がわからないかがわからない問題であり、自分自身の適応の問題である。大切なのは、私たち自身が問題の主体であることを意識し、自身に問うことだ。適切な答えを導くものは、適切な問いしかない。

【必読ポイント!】
◆自分の思考パターンを意識する
◇認知を歪める思考パターンに気づく

 今回のパンデミックのような大きな変化の際には、思考にバイアスがかかっていないか注意しなければならない。バイアスはパラダイムをつくり、またパラダイムはバイアスをつくる。パラダイムの変革をめざすには、自分の思考パターンを把握する必要がある。

 そもそも人間の認知を歪める思考パターンには、「一般化」「省略」「歪曲」がある。「一般化」とは、根拠が不十分なまま早まった結論づけをしてしまうことを意味する。「省略」とは、結論の飛躍により物事を悲観的に見てしまうことだ。たとえば「東京は感染リスクが高い」とした場合、どのような根拠のもとにそう結論づけられるのかを、具体的に掘り下げなければならない。そして「歪曲」とは、因果関係を正しく把握しないまま自分の失敗や弱み、脅威を過大評価し、反対に成功や強み、チャンスを過小評価することである。

 特に状況が刻々と変化しているときに、こうした思考パターンが生じやすい。適切な意思決定をするためには、自分の思考の偏りを認識することが必要だ。

◇認知バイアスとうまく付き合う

 思考パターンの裏には「認知バイアス」が潜んでいる。認知バイアスとは無意識に働く心理的動作をいう。いつウイルスに感染するかわからないような状況下では、人は生命維持モードのスイッチが入りやすく、認知バイアスにとらわれやすい。認知バイアスの例をいくつか紹介しよう。