まず、感染拡大の中、根拠なく「コロナ危機が去ってすぐに元の状態に戻る」と思い込もうとするのが「正常性バイアス」である。都合の悪い情報から目を背けていると、人々の行動変容に気づけない。

 つづいて、悪いニュースを耳にしてもまさか自分の身には起こらず、何とかなると考えるのが「楽観主義バイアス」である。

 また、自分に都合の良い情報ばかりを集めて反証の情報を無視する傾向を、「確証バイアス」という。正しい判断ができなくなるため危険な行為といえる。

 ただし、認知バイアスの性質を逆手にとって、楽観主義バイアスをリーダーシップの発揮に活用するといったことも可能だ。大切なのは認知バイアスを避けることではない。自分の認知の仕方を客観視し、バイアスを自覚することである。

◆「働く」の意味を問い直す
◇インテンショナルワーカーのすすめ

 毎朝決まった時間に起き、電車に乗ってオフィスに向かう。そんな日常がコロナ危機によって崩れ去った。多くの人がオフィスに出勤できず、上司に細かな指示を仰ぐことができなくなり、各自が自律的に働くことを余儀なくされた。そうした姿こそが本来働き方改革がめざすものである。

 働き方とは、アウトプットを生み出すために最適化されプログラム化されたものであるべきだ。単に決められた仕事をこなすのではなく、アウトプットから逆算して考え、意図的に動かなければならない。こうした働き方を「インテンショナルワーカー」という。

 生き方も同様である。自分の人生のゴールを明確にイメージし、そこから逆算する。そうすれば、アウトプットを最大化するための最適な働き方、ゴールまでの最短ルートが見えてくる。

 働き方の問題は、もはや人事の問題ではなくなった。経営者が会社のあり方を、個人が自分の人生を考え直すのが働き方改革だ。

 では自分はどう生きたいのか。サイボウズ株式会社代表取締役社長の青野慶久氏によると、働く意味を問い直すにはトレーニングが必要だという。学校のカリキュラムをこなすうちに、私たちは自問自答をやめてしまう。しかし本来は、自分が欲するものを探求することが幸福の追求につながるのだ。