写真:ニューヨークのウォール街Photo:Anadolu Agency/gettyimages

――筆者のクリストファー・ミムズはWSJハイテク担当コラムニスト

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 先週の株式市場は「ストンクス」市場に変貌した。ご存じない読者もいるかもしれないが、ストンクスとはインターネット上のミーム(はやりネタ)で、「ストック(株式)」という言葉を皮肉った遊び文字だ。ソーシャルメディア上では現在、ほぼ避けて通れないものになっている。つい先ごろ世界一の富豪になったイーロン・マスク氏は1月26日、「Gamestonk!!(ゲームストンク!!)」とツイート。20万件以上の「いいね」が集まった。ツイートにはオンライン掲示板レディット上のフォーラム「ウォールストリートベッツ」へのリンクがついていた。

 ウォールストリートベッツは巣ごもり状態で退屈している人々の集いの場となっている。権威に反旗を翻す個人投資家の集まりであり、こうした人々は自らをヘッジファンドや大手銀行をはじめとする米国エリート層の化身に対する「ダビデとゴリアテ」さながらの闘いのヒーローと考えている。彼らの矛先はツイッターの認証バッジ付きアカウントから米経済専門局CNBC、さらには株式取引アプリのロビンフッドにまで向かった。こうした個人投資家の多くは、ロビンフッドが1月28日午前に一部の売買を停止するまで、同アプリでオプションを取引していた(この闘いの戦略については筆者の同僚たちから詳報が出ており、制御不能に陥ったウォールストリートベッツの創設者へのインタビューもある)。

 だがこの物語には、一つのストンク、いや、ストックの命運だけにとどまらない重大な何かがある。巣ごもりのデイトレーダーが他にも手っ取り早い利益を求める中、それは一握りの株式だけにもとどまらないものだ。ウォールストリートベッツで起こっていることは、ビットコイン投資熱からオンラインの陰謀論「Qアノン」、米連邦議会議事堂の暴動事件につながった出来事に至るまで、他のインターネット現象に通じるものがある。