文楽
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「文楽(ぶんらく)」の魅力は、人間よりも人間らしく動き、人間よりも人間らしく「喜怒哀楽」を表現する人形と、それを操る人形遣いたちの動きではないかと思う。文楽には現代の企業の特徴につながる点がある。文学を切り口に、日本企業の強みや弱みを考察してみよう。(神戸情報大学院大学教授/国際教養作家・ファシリテーター 山中俊之)

文楽は歌舞伎の
本家筋であることも多い

「文楽なんてあまりわからない」「古くてつまらなさそう」と思われるかもしれない。文楽とは、「人形浄瑠璃」の通称であり、明治末期に「文楽座」という劇場が唯一の人形浄瑠璃専門の劇場となったことからこのように呼ばれるようになった。

 たしかに、セリフを語る「太夫」と呼ばれる芸人の言葉は聞き取れないこともあるし、劇のストーリーも「切腹」や「身売り」に関係するものなど、現代になじまないものもある。しかし文楽には、現代に通じる日本文化の特徴が凝縮・体現されている。

 私は文楽をたびたび鑑賞するうちに、文楽には現代の日本企業の特徴につながる点があるのではないかと感じるようになった。本稿では、世界で唯一無二のものとして高い評価を得ている「文楽」を切り口に、日本企業の強みや弱みについて見ていくことにしたい。

 今年のお正月、国立文楽劇場(大阪市)にて、『義経千本桜』と『菅原伝授手習鑑』の二つの演目を鑑賞した。一般に文楽では、この2つに『仮名手本忠臣蔵』を加えた三つの題目が「三大名作」といわれるが、お正月に三大名作のうちの二つも見ることができたのは幸運である。

「これらは歌舞伎の演目ではないのか」と思われるかもしれない。しかし、もともとは文楽(人形浄瑠璃)として演じられていたもので、のちに歌舞伎としても演じられるようになったのだ。演目で言うと、「文楽」は「歌舞伎」の本家筋であることも多いのである。

 現代の文楽の源流は、室町時代の摂津国の西宮神社で行われていた「傀儡師(くぐつし/かいらいし)」と呼ばれる人形遣(つか)いにさかのぼるといわれる。