コロナによる巣ごもり需要が高まっているといわれるアニメ。実写作品と異なり、本来ならリモートでも制作ができるため、実写作品を代替する可能性すらささやかれる。ところが、現在起こっているのはおよそ100本もの劇場公開・テレビ放映予定作品の公開延期だ。特集『コロナで崩壊寸前!どうなる!?エンタメ』(全17回)の#1では、いまだ日本のアニメ業界全体を支配するガラパゴス体制に迫る。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)
日本のアニメ業界史上最大の危機、
エヴァもコナンも公開延期
手塚治虫時代から連綿と続く、日本のアニメ業界にとって「史上最大の危機」と言ってもいい事態が起きている。
今年の春から冬にかけて劇場公開や地上波テレビで放映の予定だったアニメ作品が、続々と公開・放映延期の憂き目に遭っているのだ。
7月12日時点でのダイヤモンド編集部調べで判明しただけでも、その数は劇場公開で42本、地上波テレビで69本に及ぶ。国内で公開される劇場公開用のアニメ映画としては、最大級の興行収入100億円超えとなる「劇場版名探偵コナン 緋色の弾丸」も1年間の公開延期が決定した。
一方、「シン・エヴァンゲリオン劇場版」「STAND BY ME ドラえもん2」「ハイキュー!!」「キングダム」のように、有名作品でもいまだ新たな予定が立っていないものも多い。
劇場に大量に人を集める映画館での上映が、映画館や興行主である映画会社側の判断で延期となるのは分かる。特に子ども向けのアニメ映画の場合、観客が映画館で歌ったり踊ったりする作品も多い。感染防止の観点からもやむを得ないと判断したケースも多かった。スタジオコロリド制作の「泣きたい私は猫をかぶる」のように、劇場公開を断念して米ネットフリックスでの配信に切り替えるという例も出た。
だが、日本のアニメ業界の場合、これだけ大規模に公開延期や中止に至った理由はもう一つある。「作れない」という問題である。
こう書くと不思議に思う人も多いだろう。リアルに人が密集しての撮影が必要になる実写作品と違い、アニメーターが絵を描き、それを撮影して後で声を吹き込むアニメは、究極的には「人が実際に顔を突き合わせなくても作業ができる」環境にあるからだ。
現にヨーロッパでは、日本よりはるかに厳しいロックダウンを実施していながら、アニメ映画祭が予定通り開催され、ロックダウン中に制作された作品が公開されていた。にもかかわらず、なぜ日本ではこれほど多くの作品が制作中断・延期となってきたのか。それには、日本のアニメ制作業界が抱える構造問題が背景にある。