組織の中に漂う雰囲気や空気、暗黙の価値観。目には見えないけれど、組織のありように大きな影響を与えるものが組織文化です。強い組織へと生まれ変わるには、この組織文化を知り、変える必要があります。ウィニングカルチャーを生みだすにはどうすればいいのか。新刊『ウィニングカルチャー 勝ちぐせのある人と組織のつくり方』をベースに、本連載では読者のみなさんと一緒に組織文化について勉強していきましょう。
みなさんは、「組織文化」と聞いて何を思い浮かべますか。
言葉を見ると、「組織」と「文化」という2つの単語で構成されていることが分かります。普通、「文化」というと国や地域、特定の地域の人々が持つ伝統や歴史にひもづく習慣などを指すことが多いはずです。そんな広い意味を持つ「文化」という言葉の前に「組織」が加わるとどんな意味を持つのか。
組織文化とは、組織の中にある雰囲気や空気のようなものだと私は考えています。人が二人以上集まれば、それはすべて組織と言えます。恋人同士や家族、10人に満たない小さなチームも組織です。そして、たった二人の組織でもそこには二人が何となく共有する価値観があり、それは組織文化となり得ます。
この組織文化が、いま非常に注目されはじめています。
組織文化とはこれからのチームづくりに欠かせない重要な要素となる。そう考えて、新刊『ウィニングカルチャー 勝ちぐせのある人と組織のつくり方』では組織文化について正面から向き合い、その正体を解明していきました。組織文化についてみなさんと一緒に考えたいと思い、ともに学び、ともに成長するためのコミュニティ「ウィニングカルチャーラボ」も立ち上げました。興味のある人はぜひ、参加してみてください。
なぜ、私が組織文化に注目をしたのか。
私はこれまで人材育成に長く携わり、カリスマ不要の組織づくり「フォロワーシップ」を提唱し、日本のリーダーの姿を変えてきました。
同時にリーダーの育成(人の部分)だけでなく、どうやってコトを回すかという組織マネジメントについても独自のメソッドを提唱してきました。スポーツやビジネスの世界で、リーダーが自分のスタイルを構築し、そのスタイルを発揮するための「VSS(ビジョン・ストーリー・シナリオ)マネジメント」や、一人ひとりが主体的に動くための「GPDR(目標設定・計画準備・実践実行・振り返り内省)サイクル」といったフレームワークを提唱し、スポーツチームや企業に導入してきたのです。
しかし、その中で悩ましい問題に直面しました。人と組織マネジメントのフレームワークだけでは、なかなか組織をドラスティックに変革することが難しい。そう、薄々感じるようになっていました。
どんなに素晴らしいリーダーがいて、有効なフレームワークがあっても、その組織が持つ雰囲気や組織の中の人々が共有する価値観、つまりは組織文化が人々の行動や言動に大きな影響を与えており、この組織文化が変わらない限り、組織は大きく変わりません。それも、その組織文化はいつ生まれたのかも分からず、さらに組織の中にいる人々もほとんど認識していないケースがほとんどです。
逆に言えば、組織の中の誰もが当たり前のように受け入れ、空気のように感じている暗黙の価値観。これを変えることができれば、組織は大きく変革していく。そう考え、組織文化についてより深く考えるようになりました。
本書の中では、さまざまな理論や多く専門家の知見をお借りするのと同時に、実際に私自身が携わったさまざまな組織文化の変革を取り上げています。それらを交互に交えながら、組織文化を変えるための手法をご紹介しています。
本連載では、私の考えるメソッドを一つの土台としながら、みなさんで組織文化について考えていきたいと思います(組織文化についてともに学び、ともに成長するコミュニティ「ウィニングカルチャーラボ」も用意しました)。
テクノロジーの進化によって、これまで目に見えなかったものがどんどん可視化されるようになりました。人の気持ちがデータで分かるようになったり、脳波や空気を科学的に読んだりすることもできるようになってきました。
しかし、それらが「見える」からといって、問題が「解決」できるわけではありません。私たちが組織の中で何となく感じている暗黙知を知り、変えていくには、さまざまな課題を解決していく必要があります。
組織の中の誰かがふともらす言葉一つを取ってみても、そこには組織文化が大きな影響を与えています。チームの中でどんな時によろこびが共有され、怒りが広がり、苦笑や共感が生まれるのか。こうしたチームの感情の土台にあるのが組織文化です。
さあ、これから一緒に学んでいきましょう。
(本記事は、音声メディア「Voicy」の私のチャンネル「成長に繋がる問いかけコーチング」で2021年2月8日に配信した「なぜ、いま、組織文化が大切なのか?」を記事化しました)