「勝ちぐせ」「負けぐせ」という言葉を、普段の生活の中で聞くことがあるかもしれません。「勝ちぐせ」と聞くと、みなさんはどんな状況を思い浮かべますか。新刊『ウィニングカルチャー 勝ちぐせのある人と組織のつくり方』では、サブタイトルに「勝ちぐせ」という言葉を盛り込んでいます。そこで今回は、「勝ちぐせ」について考えてみましょう。
みなさんは、「勝ちぐせ」という言葉を聞いてどんな状況をイメージしますか。
連戦連勝のスポーツチームや、競合プレゼンで常に勝つビジネスパーソン、毎月の売上目標を常に達成する営業パーソン……。
ビジネスやスポーツの世界はよく「戦い」や「戦争」にたとえられることがあります。その中でも「勝ちぐせ」という言葉には、「負けゼロ」の強者のイメージがあるかもしれません。
しかし実は、「勝ちぐせがある」ということは、「勝ち続けること」とイコールではありません。
組織文化の世界で「くせ」というと、それは組織に属する人々が当たり前だと思っている感覚のことを指します。組織の中で人々が無意識のうちに共有している価値観や雰囲気、くせが組織文化です。
そして「勝ちぐせ」とは、「連戦連勝だからあのチームは勝ちぐせがある」「常に目標を達成し続けているからあの人は勝ちぐせを持っている」など事実に基づく評価だと思われがちです。
しかし、実はそうではないのです。
「勝ちぐせ」とは、「勝ち」や「負け」に対する捉え方のこと。
例えば、ラグビーの世界におけるニュージーランド代表のオールブラックス。
2019年のラグビーワールドカップでは残念ながら優勝できませんでしたが、オールブラックスは世界的に見ても、常に勝ち続けている勝率世界一のチームです。間違いなく、このオールブラックスには「勝ちぐせ」があります。
サッカーの世界では、私自身も実際に取材に訪れたことのあるスペインのFCバルセロナ。
世界有数のチームが集まる欧州サッカークラブの中でも、FCバルセロナは「勝ちぐせ」のある強いチームと言われています。
ただ繰り返しますが、「勝ちぐせ」とは「勝ち続けていること」という事実を指すわけではありません。そうではなく、根本的に「勝ちが当たり前である」と考えることが「勝ちぐせ」の正体です。
分かりやすいように、私が早稲田大学ラグビー蹴球部の監督を務めていたころのエピソードを紹介しましょう。私が監督に就任して2年目ことです。
私はこの年、チームに「勝ちぐせ」をつけたいと考えて、シーズンが始まってからは練習試合も含めて、一度も負けることなく勝ち続けるようにしていました。50タイトルで連戦連勝を続け、本番となる大学選手権の決勝戦でも実際に勝ち、大学日本一となりました。
この時、チームの中ではシーズンを通して勝つことが当たり前になっていたので、部員たちは「勝つか負けるか」を考えるのではなく、「いかに勝つか」「圧勝しなければ意味がない」と思うようになっていました。
大学選手権で優勝したときも、勝った瞬間に「やった!」と諸手を挙げて喜ぶというよりも、ほっとした気持ちになったことを覚えています。きっと当時の私と同じように、勝ちぐせのあるチームが試合に勝ったとき、責任や覚悟をもったリーダーたちは、飛び上がって大喜びをするよりも、結果を出したことにまずは安堵するのではないでしょうか。
頭上に大きく拳を振り上げるガッツポーズではなく、ぐっと自分の中でかみしめるようなガッツポーズ。勝つことが当たり前なので、負けることに対しては極度の嫌悪感を持っていましたし、勝てばそれまで背負ってきた重荷を一瞬、ふっと降ろして「ああよかった」「ほっとした」と感じるのです。
繰り返しますが、「勝ちぐせがある」とは、勝つことが当たり前なので勝って大喜びすることではありません。そうではなく「勝ちぐせがある」とは謙虚に勝ちを振り返り、理想とする勝ち方を考え、切磋琢磨する姿勢を指すように、私は思います。
どんな組織のリーダーも、チームに「勝ちぐせ」を植えつけたいと考えているはずです。
勝ちを当たり前にするには、負けの要因が見えたら強い嫌悪感を感じ、それを克服する気合いをみなぎらせること。それが勝ちぐせをつけるための第一歩ではないでしょうか。
あなたのチームにとって、「勝ちぐせ」とは何ですか。そしてどうやって「勝ちぐせのあるチーム」をつくっていきますか。
新刊『ウィニングカルチャー 勝ちぐせのある人と組織のつくり方』や組織文化についてみなさんとともに学び、ともに成長するコミュニティ「ウィニングカルチャーラボ」を通して、一緒に「勝ちぐせ」について考えていきたいと思います。
(本記事は、音声メディア「Voicy」の私のチャンネル「成長に繋がる問いかけコーチング」で2021年2月9日に配信した「勝ち癖とは?」を記事化しました)