生活保護の申請を
「ためらわせる」扶養照会
1月27日、参院予算委員会でコロナ禍による生活への影響への対応について問われた菅義偉首相が、「最終的には生活保護」と答えたことから、生活保護への関心が高まり続けている。現在、厚労省は「生活保護は権利」「ためらわずに申請を」と広報しているのだが、実態は「権利だから、必要ならためらわずに申請して利用できる」という制度ではない。
生活保護への「ためらい」をもたらしている最大の要因は、「扶養照会」が行われて“家族バレ”する可能性である。「最終的には生活保護」という菅首相の発言の是非はともかく、生活保護を必要なら使える制度にするためには、「扶養照会」を撤廃する必要があるはずだ。
タイミングを逃さずに、経験者の声を集めて広く伝えた支援団体などの動きに呼応する形で、2月4日、田村憲久厚労相は扶養照会の適用を緩和する方針を示した。また8日の衆院予算委員会で、菅首相は扶養照会を「より弾力的に運用」できるように検討していると述べた。ただし2月10日時点では、「より弾力的に運用」の内容は明らかになっていない。また菅首相は、扶養照会そのものの撤廃については否定している。
同じ2月8日、一般社団法人つくろい東京ファンドと生活保護問題対策全国会議は合同で、厚生労働省社会・援護局保護課に対し、扶養照会の見直しに関する要望を行った。
そもそもの問題は、扶養照会の位置づけの不明確さにある。扶養照会が必要であることは、生活保護法に規定されている。しかし、生活保護の申請を受けた福祉事務所は、申請者の親族の誰にどのような扶養照会を行うべきなのだろうか。あるいは、どのような場合に扶養照会を行わないようにしなくてはならないのだろうか。法律家や行政のエキスパートが通知類を総合しても、「イミフ」なのだ。