「発想法のテクニック」を71通り集めてみたPhoto: Adobe Stock

先行きの見えない2021年。これからは「新しいこと」や「人と違ったこと」を考えるスキルが重要になってくる。だが、「考える」といっても、いったい何をどう考えればいいのか?
そんな人に読んでほしいのが、このたび刊行された書籍『考える術──人と違うことが次々ひらめくすごい思考ワザ71』だ。
著者の藤原麻里菜氏は、「無駄づくり」という異色のコンテンツをネットを中心に展開しており、これまでに何百もの作品を発表、その人気は海外にも波及し、台湾での個展では2万5000人もの観客が殺到、SNS再生数は4000万回にも達する話題の発明家だ。
そんな著者が、これまでに発明を何年も継続してきた中でつかんだ「考えるテクニック」をあますところなく詰め込んだのが本書だ。「何も出てこない……」とうんうんとうなっているなら、本書をパッと開いて、好きなワザを使ってみてほしい。「逆転」「主語変え」「マナー破り」「合体」「似たもの合わせ」……便利に使える思考ワザが満載である。
本稿ではこの『考える術──人と違うことが次々ひらめくすごい思考ワザ71』から特別に、一部を抜粋・編集して紹介する。

「感情」からアイディアを考える方法

 本書では、新しい発想、人と違った発想ができる71通りの「発想のテクニック」を集めました。ここではその1つ、「感情」からアイディアを考える方法を紹介します。

 わたしたちは、つねにいろいろなことを感じながら生活しています。SNSを見ているだけでも、動物のかわいい動画に癒やされてシェアしたり、暴論を目にしてムカついてコメントしたり。

 そんな生活の中で湧き出てくる感情たちは、どれもアイディアを考えるのに一役買ってくれます。

・ネガティブな感情
絶望/怒り/苦悩/悲しみ/劣等感/空虚 苦しみ/恥ずかしさ/恨み/嫉妬/緊張/罪悪感
・ポジティブな感情
感動/満足/快感/幸福/安心/愛しさ/期待/尊敬/リラックス
・モヤモヤした感情
優越感/シャーデンフロイデ/サウダージ(エモい)/切なさ/困惑/不安

 感情にはさまざまなものがあるが、3つのボックスに分けてみました。

 最初のボックスは、ネガティブな感情を集めました。ずっとは感じていたくない感情です。「この感情から脱するには何がどうなればいいだろう」と考えることでアイディアが生まれます。

 次のボックスは、ポジティブなものです。「こうした感情をもっと持続するにはどうすればいいだろう」「いつでもこんな感情を抱くにはどうすればいいだろう」というところからアイディアを考えることができます。

 最後のボックスは、モヤモヤするもの。ちょっと言葉にしにくいような感情です。たとえば「サウダージ」というのは、ポルトガル語で「楽しくて暖かい日々を思い出して懐かしいような切ないような気持ちになる」というニュアンスらしい。日本語でいうと「エモい」が似たようなニュアンスではないかなと思います。エモいは「エモーショナル」からきていて、懐かしいような切ないような複雑な気持ちです。

 また、「シャーデンフロイデ」という言葉はドイツ語で、人の不幸を見聞きして、なぜかうれしくなってしまうような感情だといいます。日本語の「他人の不幸でメシがうまい」、略して「メシウマ」とほぼ同義です。

 こうしたモヤモヤした微妙な感情は、「この感じを人とうまく共有するにはどうすればいいだろう」という方向で考えるとおもしろいアイディアにつながります。

「エピソード」を思い出す

 考えるべきテーマに対して、それにまつわる感情を考えていくことで、思考を広げることができます。

 ここでは「お風呂」をテーマにして、感情のリストを眺めながら考えてみましょう。お風呂でどんな感情を感じたことがあるか、エピソードを思い出してみるのです。

 わたしがお風呂関係で抱いたことのある感情は、たとえばこういったものです。

・怒り:栓をするのを忘れてお湯を張ってしまった。自分はなんでそんな不注意なんだ。

・切なさ:わたしは湯船を洗うのが面倒だから、お湯を追い炊きして3日は使い回す。でも、ぬるぬるの湯船に入っていると、なんだか切ない気持ちになってくる。

・楽しさ:子どものときによくお風呂で遊んで楽しかった。

・困惑:そういえば、必要だろうと思って洗面器を買ったけど一回も使ってないな。

 テーマを絞って考えることで、ふだんならすぐに忘れてしまっているような微妙な感情を思い出すことができました。

 ここから、「この感情から脱するにはどうすればいいだろう?」「この感情をもっと抱けるようにするには?」「この感情を共有するにはどうすればいい?」といった視点から何らかの問題を挙げて、解決方法を考えてみましょう。

【考えてみる】いま目の前にあるモノにどのような感情を抱いたことがあるかを思い出そう。その感情にもっとひたったり、その感情から脱したりできるアイディアを考えてみよう。

 わたしはいまパソコンでこの文章を書いているので、パソコンに対して抱いたことのある感情から考えてみようと思います。まず最初に思い浮かぶのは、「フリーズしたときの苛立ち」です。

 このネガティブな感情から脱するにはどうすればよいでしょう。

 たとえば、パンチングマシーンはどうでしょう。叩くとパソコンの電源が強制的に落ちるパンチングマシーンがあったらこの感情は解消できそうです(下図参照)

「発想法のテクニック」を71通り集めてみた『強制終了パンチングマシーン』
怒りにまかせてサンドバッグを殴ることでPCを強制終了させられる。(『考える術』より)

(本原稿は、藤原麻里菜著『考える術──人と違うことが次々ひらめくすごい思考ワザ71』の内容を抜粋・編集したものです)

藤原麻里菜(ふじわら・まりな)
1993年、横浜生まれ。発明家、映像クリエイター、作家。頭の中に浮かんだ不必要な物を何とかつくりあげる「無駄づくり」を主な活動とし、YouTubeを中心にコンテンツを広げている。SNSの総フォロワー数は20万人を超え、動画再生数は4000万回を突破、その人気は中国、アメリカ、ヨーロッパなど海外にも広がっている。2016年、Google主催「YouTubeNextUp」に入賞。2018年、国外での初個展「無用發明展――無中生有的沒有用部屋in台北」を開催、2万5000人以上の来場者を記録した。Awwwards Conference Tokyo 2020、eAT2018 in KANAZAWA、アドテック2016東京・関西などで登壇。「総務省 異能vation 破壊的な挑戦者部門 2019年度」採択。最新刊に『考える術──人と違うことが次々ひらめくすごい思考ワザ71』がある。