2021年2月4日の記者会見での森喜朗氏 Photo:Pool/gettyimages

東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が辞任を表明したが、これは森氏に対するバッシングで終わらせればいいというものではない。より本質的に考えるべき問題は、森氏のような価値観が、いまだに日本社会の中枢を占めている人の中に根強く残り、政策決定に強い影響力があるということだ。(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)

高度経済成長期の成功体験が足かせに

 東京五輪は、日本の国力を世界に示す「国威高揚策」として招致された一面がある。また、巨大なハコモノの建設にカネをバラまいて景気の浮揚をもくろむ経済政策でもある。

 要するに、森氏に代表される昭和の高度経済成長期の成功体験を強く持っている世代の影響力が強く反映された政策なのだ。そして、それが日本の発展の足を引っ張ってきたことが問題ではないだろうか。

 コロナ禍に見舞われた我々は、リモートワークなどで必要なIT・デジタル技術で日本が世界の後塵を拝しているという事実を目の当たりにした。遅れてしまった理由は、安倍晋三政権の時に、「アベノミクス」と呼ばれた異次元の金融緩和・公共事業のバラマキにより、斜陽産業の延命が図られた一方で、成長戦略の実行が先送りされ続けたためである(参照:「国民が「経済にしか関心がない」ことも政治の混乱の一因だ」)。

 GAFAと呼ばれる巨大IT・デジタル企業体が世界を席巻し、中国勢もそれを追う展開となっていた時、日本では昭和の夢の復活を追う老人たちに、安倍首相など現役政治家たちが配慮する「シルバー・デモクラシー」が続き、イノベーションの芽が摘まれ続けてきた。

「昭和の保守派」は日本を滅亡させたいのか?
極めて低い女性の権利への意識

 森氏は、かつて首相だった時に「日本は神の国」と失言し、バッシングを受けた。いわば「昭和の保守派」である。私は、「昭和の保守派」たちに常々聞きたいと思っていたことがある。

 それは、「昭和の保守派」たちの様々な主張をそのまま実行すれば、日本は衰退の一途をたどってしまうのではないかという疑問だ。強いていえば、彼らは、まるで日本を滅亡させたいのではないかとさえ思えてならないのである。