僕の人生を変えた
ある経営者の「厳しい言葉」

 なぜ、そこまでしようと思ったのか?

 そこには、僕なりに深刻な「精神的な問題」がありました。

 僕がTBSを退職して“保険屋”をめざしたのは、テレビ局に勤めているというだけでチヤホヤされて“いい気”になっているのが、あまりにもカッコ悪いことだと思ったからです。

 そう思い知らされた瞬間のことは、今でも忘れることができません。

 TBS時代に、友人のパーティに参加していたときのことです。僕が座ったテーブルには、ある飲食店経営者がいらっしゃいました。みんなで盛り上がるのが大好きな僕は、そのときも、会話の輪の中心になって思いっきり楽しんでいました。しかし、その飲食店経営者は適当に合わせてはくれましたが、少し不機嫌そうにも見えました。

 そして、パーティも終わりに近づいたときに、こんな言葉を言われたのです。

「実はあんたらみたいなエリートって大嫌いなんだ。オレは中卒でコンプレックスの塊のような男だよ。だからこそ血ヘドを吐いて泥水も呑んで、会社をここまで大きくできたんだ」

 もちろん、場の空気は凍りつきました。

 仲間のなかには、「こんな場所で、何を言い出すんだよ……」という表情を浮かべた人もいました。でも、この言葉は、僕の心のなかでグジュグジュと疼いていた「傷口」に突き刺さりました。そして、「俺はこの人に、人としてぜんぜん負けている」と思わずにいられませんでした。

 たしかに、僕は「学歴」や「勤務先」などのおかげで、周りからチヤホヤされて“いい気”になっているだけでした。この経営者のように、ギリギリの限界まで力を尽くしたこともなかった。「この人の生き方のほうが、何百倍もカッコいい」と認めないわけにはいかなかったのです。