しんどい想いをするから、
“頑張れる器”が大きくなる

 そして、今になって振り返ると、営業マンになりたての段階で、自分に「物理的に、これ以上は絶対にムリ」というレベルのハードワークを課したのは正解だったと思っています。

 なぜなら、最初の段階でマックスに振り切った仕事量をこなすことによって、そこに込めた「仕事に対する熱量」が、それ以降の自分の標準になるからです。いろいろな営業マンを見てきましたが、最初に80の熱量で仕事をしていた人が、あとになってから100、120の熱量を発揮するようになるケースはほとんどありません。初期設定がその人の働き方を決定づけるものなのです。

 これは、京大アメフト部の水野監督からもよく言われたことです。

 

「男は30歳までに器が決まる。それは“頑張れる器”の大きさや。死ぬほどしんどい思いをしろ。それがおまえの器を作ってるんや。楽をしても器は大きくならんぞ」

 

 学生時代は、あまりピンと来なかったのですが、今となれば、「まさにそのとおりだ」と深く納得します。歳を取ってから、若い頃に経験した苦労を越えた苦労に耐えることはできません。これは営業も一緒です。できるだけ早いタイミングで、最大限のハードワークをこなすことが、その人の「耐性」を最大限に高めてくれるのです。

自分の限界を少し超える
「ハードワーク」が心を強くする

 しかも、ハードワークをした人間は強い。

 僕は、プルデンシャル生命保険の優秀な営業マンたちと売上を競い合い、何度も劣勢に立たされたことがありますが、そんなときに「火事場のバカ力」が湧き上がって逆転をすることができたのは、「俺は、誰よりもハードワークをしてきた。その俺が負けるわけがない」と心の底から思えたからです。

 もちろん、無理やりハードワークをさせられたら、一瞬で心は折れてしまうでしょう。だけど、自ら望んで行うハードワークは、苦しいときにも心をもちこたえる「城壁」となってくれるのです。

 僕のケースは特殊だと思います。

 会社に寝泊まりするほど極端なハードワークをしなくても、「結果」を出すことはできるはずです。だけど、“駆け出し”のうちは、スマートに効率的な働き方をしようとするよりも、自分の限界をちょっと超えるくらいのハードワークを課したほうがいいと、僕は思っています。

 そもそも、たいした経験も積んでいないのに、「何が効率的で、何が非効率的なのか」なんてわかりっこありません。さんざん非効率的なこともやって、失敗を繰り返すなかで、「効率的な営業の仕方」を体で学んでいくのです。無駄を知らずして効率化など出来るわけがないのです。

 いまは「働き方改革」の時代です。

 だから、「ハードワークなんて時代遅れだ」と笑う人もいるでしょう。

 でも、笑わば笑えです。僕は、その後、「保険を売ろう」としなくても、お客様から「保険に入りたい」とご連絡をいただけるようになり、「超効率的な営業スタイル」を確立することができましたが、それは、最初の段階でマックスに振り切ったハードワークをしたからです。最初から「効率的な働き方」をしようとしても、中途半端な技術しか身につかないと確信しているのです(詳しくは、『超★営業思考』に書いてありますので、ぜひお読みください)。