透明性とは何か? 個人情報の観点を見落としている世論

 あなたを政界に導いた森喜朗前会長ですが、その森氏の女性蔑視発言によって、あなたは再びスポーツの現場に戻ってきました。

 私は今回の人事には政界の思惑が絡んでいると察しました。まず森氏の辞任を実現し新たな会長を見つけなければ、この東京五輪開催が危ういと思った時点で政府が動き出しました。そのきっかけは IOCが森氏の発言を「完全に不適切」とした2月9日の声明です。これで、政界は森氏辞任に向けてかじを切らなくてはいけなくなりました。

 しかしあの森氏にやめてくださいと言える人がいるでしょうか? ここまでの組織委員会を支えてきたのは、森氏自身であり、そのことを熟知している人にとって、辞任を勧めることはできませんでした。だから、森氏が自身で IOC の声明の意味を理解し、決心しなければならなかったのです。

 そして、その裏で、森氏は意中の人への打診をしたはずです。おそらく心を許すあなたにも相談があったのではないでしょうか? 森氏の本命は安倍晋三前首相だったと思いますが、合意してくれるのは川淵三郎氏しかいないと思ったのではないでしょうか? この選定はあなたも同感だったのではないかと思います。

 しかし、情報が漏れ、官邸から「透明性ある選考」を求められました。世論もそれを後押しし、組織委員会は選考検討委員会を作りました。しかし、そのメンバーも選考方法も非公開の状況に批判が集まりました。

 ただ、公益財団法人の人事における透明性とはなんなのでしょう? 人事には個人情報保護の観点から透明にできないところが多いのも事実です。私は菅首相が求めた「透明性」とは別の意味ではなかったのかと思います。すなわち、彼に対する透明性=彼の目に見える透明性という意味ではないかと思うのです。「今回の人事は森氏による人事ではない」と言いたかったのではないか…私はそう思いました。