視野を広げるきっかけとなる書籍をビジネスパーソン向けに厳選し、ダイジェストにして配信する「SERENDIP(セレンディップ)」。この連載では、経営層・管理層の新たな発想のきっかけになる書籍を、SERENDIP編集部のチーフ・エディターである吉川清史が豊富な読書量と取材経験などからレビューします。
「ネギ界のダイソン」を目指す
ねぎびとカンパニー
ダイソンという英国発の家電メーカーがある。価格はちょっと高いが高性能のサイクロン式掃除機や、羽根のない扇風機で知られる。
創業者のジェームズ・ダイソン氏が世界初のサイクロン式掃除機のアイデアを得たのは、1978年のことだ。彼は、当時の掃除機の紙パックが目詰まりして吸引力が低下することに不満を抱いていた。そんなとき、製材工場の屋根に取り付けられていた、木くずと空気を分離する機械を見て、その原理を掃除機に応用できないかと考えた。
そのアイデアをもとに、幾多の失敗を経て完成させたのが、紙パックのない、サイクロン式掃除機なのである。
ダイソンは、掃除機の紙パック、扇風機の羽根といった「あって当然のもの」という常識を取り払い、革新的な製品を送り出してきた。そして、他のあらゆる家電に手を出そうとせず、特定のカテゴリーで勝負し、「掃除機といえばダイソン」「羽根なし扇風機といえばダイソン」という評価を確立した。
そんなダイソンのような会社を目指す、まったくの異分野の企業がある。「ねぎびとカンパニー」だ。主に扱うのは「ネギ」。そう、あの野菜のネギである。創業者の清水寅氏は「ネギ界のダイソンになる」ことを目指し、山形県天童市にて会社組織で農業を行い、高品質のネギを生産している。