レッドオーシャンと化して久しい日本の家電市場で、次々とヒット商品を生み出している「バルミューダ」。創業から約20年、倒産の危機もあったという紆余曲折(うよきょくせつ)の道のりを、どう乗り越えてきたのか。創業社長の寺尾玄氏が語る。(構成/ダイヤモンド編集部 笠原里穂)
金に泣いた創業期
やけくそで挑んだ新製品開発
10年近くの歳月をかけた音楽の道をあきらめ、私がものづくりを始めたのは、今から約20年前のことです。バルミューダ第1弾製品となるノートパソコンの冷却台「X-Base」が完成した2003年、有限会社バルミューダデザイン(のちにバルミューダに社名変更)を設立しました。社員は私たった一人でした。
振り返ってみれば、会社や商品を作ることは決して難しいことではないと思います。難しいのは、お客さまをつくること。そのために、スタートアップの状態から何年も頑張り続けなければならないので、その間に必ず資金の危機がやってきます。
創業したばかりの頃は、この資金調達が一番大変でした。当時は、金に泣いた。泣き続けましたね。
一番の危機はリーマン・ショックの時に訪れました。その当時、年商は4500万円で1400万円の赤字、銀行からの借り入れが3000万円あるという状態でした。そんな中、リーマン・ショックのあおりで受注が一気にストップしました。09年初頭のことです。