60年ぶりの画期的な
判決は確定するか

 ともあれ、2月22日の大阪地裁判決は、「生活保護基準の低さは異常で違法」ということを認めた判決としては、60年ぶりのものであった。60年前の判決は、朝日訴訟東京地裁判決であった。当時なら、「敗戦からまだ15年、とにかく国にお金がない」という財政上の理由が認められる余地もあった。しかし現在の日本では、そういう主張は無理筋であろう。しかも生活保護基準引き下げの根拠は、厚労省内部で行われた「物価偽装」なのである。

 元厚生官僚として、尾藤さんは語る。

「生活保護費の減額はデタラメ」と厚労省を一蹴した、大阪地裁判決の意義本連載の著者・みわよしこさんの書籍『生活保護リアル』(日本評論社)好評発売中

「厚労省の担当者が、意図的に数字を操作したり捻じ曲げたりするのは、恥ずべきことです。今回の大阪地裁判決には、その違法性が明記されています。厚労省としては、真剣に受け止めなくてはならないのではないでしょうか。関係省庁と協議は必要でしょうけれど、その上で、判決を確定させるべきではないでしょうか。そういう当然のことを申し上げましたが、暖簾に腕押しで。厚労行政のプライドが感じられませんでした」(尾藤さん)

 尾藤さんの語り口は穏やかだが、声と雰囲気には迫力がある。厚労省職員は、さぞ怖かったであろう。

「でも、コロナ禍での厚労省保護課の対応は、評価しています。菅首相も『最終的には生活保護』と、生活保護の意義を認めています。ですから、期待を込めて、優しく言いました」(尾藤さん)

 大阪地裁判決は、愛猫家であり数学が好きな筆者にとって、多重に縁起のよい判決であった。当日の2月22日は、日本の愛猫家にとっては「猫の日」である。また、3名の裁判官のうち1名は、筆者が尊敬する数学者の1人と同姓同名である。この判決が確定すれば、コロナ禍に翻弄されて明るい見通しを持てない日本全体に、よい縁起がもたらされる。なぜなら、住民税非課税や就学援助など多数の制度が、生活保護基準と連動しているからだ。

(フリーランス・ライター みわよしこ)