日本を不幸にした原因は、
そこかしこに蔓延る“しがらみ”や“ムラ意識”
日本経済はバブル崩壊後の失われた10年の後、回復の兆しが見えたのもつかの間、その後さらに10年、リーマンショックの影響、政治の迷走、地震と原発クライシス、隣国との摩擦による企業と経済への影響など、次々と困難な状況がとめどもなく続いています。さらには、世界最速で進む高齢化社会を抱え、日本の労働人口は今後も確実に減少していくなか、医療や年金を支えるための財源を確保するのは困難をきわめています。このままではこれから数十年、日本の社会経済の見通しは決して明るくありません。
現在の日本の状況を招いた要因には、予測困難な出来事もあったとはいえ、いろいろな“しがらみ”にからめとられて族議員化した政治家、既得権益を守ろうとする組織、影響力を維持拡大しようとする省庁など、残念ながら、多くの場面で「自分たちのグループの利害を優先させる」意思決定があったと思います。視野狭窄で古い“ムラ意識”のような慣習が、日本社会のそこかしこに蔓延(はびこ)っていることが、改革を阻害し、政治の機能不全を許してきたことが大きな要因であることは否めません。
ネットワークを可能にする
何の制約もない自由な組織
いかに優秀な人でも、組織に所属していると結局はその論理に従わざるをえないというジレンマを抱えた経験があるでしょう。そういうジレンマから解放されているのが、本書に出てくる偉大なNPOなのです。
本書で取り上げた偉大なNPOは、「6つの原則」を使って社会変革の実現を手助けしています。そのうちの一つに「ネットワークを育てる」という原則がありますが、これはわかりやすく言えば、「競争より協力」を推し進めることです。偉大なNPOは、ネットワークを築き、他の組織を希少な資源を競い合うライバルではなく仲間として扱っています。
政府か産業界か社会セクターかにかかわらず、あらゆる人間の活動には結局のところ「競争」が自然な形である。実際、どのNPOも、「パイ」が永遠に拡大していくとは思っていない。多くは、資金や知名度、才能などの面で、他の組織をライバル視している。長い目で見れば、競争より協力のほうがよい戦略ではあるが、必ずしも組織の短期的利益に結びつくわけではない、と専門家も指摘している。
しかし、大きな影響力を持つNPOは、目先の短期的利益の先を見通していて、競わず連携すれば、もっと壮大なことが達成できることを知っている。ネットワーク重視の考え方は、一見、寛容で利他的に見えるが、実際には、正しい知識をもとに自己利益を追求しているというほうが表現としては適切である。(第5章「NPOのネットワークを育てる」160ページ)