ワークマン好きブロガーを
巻き込んだ製品開発

 その頃、ありがたいことにブログやYouTubeでワークマン製品のユニークな使い方を紹介してくれる人たちが現れた。

 そこでその人たちに直接話を聞くことにした。

 ワークマン好きブロガー向け「新製品発表会」を年2回開催して積極的に意見を集めた。

 そこではきつい意見も出されるが、その声を製品に反映する。

 そうしていくうちに、ブロガーさんからも「自分の製品ができた」と喜びの声をもらうようになった。

 そこでさらに話を進め、「製品開発アンバサダー」(以下、アンバサダー)になってもらった。ただ、お金は一切払っていない

 ワークマンの各店舗でブロガーさんのポスターを貼り出すとブロガーさんのアクセス数が増える。当社の製品も売れる。互いに金銭の授受なしにウィン・ウィンの関係を築いている。

 ジャンルも徐々に広がり、バイク、マラソン、ランニング、登山、アウトドアなど特定分野に詳しく、発信力を持った人と提携し、新製品を開発するようになった。

 製品開発の過程でお客様がモニター参加するケースは多いが、当社の本気度はレベルが違う。

 製品開発の打合せから参加してもらい、新製品企画や継続製品では翌年の改良アイデアをどんどん出してもらっている。

 アンバサダーは、その分野のオピニオンリーダー。その分野について次なるトレンドを創り出す影響力を持っている。だからその人の意見を聞くのが一番いい。その分野に詳しくない一般人1000人の意見を聞くより、影響力のあるアンバサダーの言うことをほぼ「丸呑み」して製品に反映したほうが絶対にいい。

土屋哲雄(つちや・てつお)
株式会社ワークマン専務取締役
1952年生まれ。東京大学経済学部卒。三井物産入社後、海外留学を経て、三井物産デジタル社長に就任。企業内ベンチャーとして電子機器製品を開発し大ヒット。本社経営企画室次長、エレクトロニクス製品開発部長、上海広電三井物貿有限公司総経理、三井情報取締役など30年以上の商社勤務を経て2012年、ワークマンに入社。プロ顧客をターゲットとする作業服専門店に「エクセル経営」を持ち込んで社内改革。一般客向けに企画したアウトドアウェア新業態店「ワークマンプラス(WORKMAN Plus)」が大ヒットし、「マーケター・オブ・ザ・イヤー2019」大賞、会社として「2019年度ポーター賞」を受賞。2012年、ワークマン常務取締役。2019年6月、専務取締役経営企画部・開発本部・情報システム部・ロジスティクス部担当(現任)に就任。「ダイヤモンド経営塾」第八期講師。これまで明かされてこなかった「しない経営」と「エクセル経営」の両輪によりブルーオーシャン市場を頑張らずに切り拓く秘密を本書で初めて公開。本書が初の著書。