中国・上海市で日本式の在宅介護サービスである「訪問入浴」が注目され、大きな話題となっている。そもそも入浴文化は日本と中国では大きく異なる。しかも、日本でも、訪問入浴は介護報酬の点数が比較的高く、人手と手間のかかる介護サービスとして認知されている。なぜ、そのような日本式の訪問入浴が中国の上海で受け入れられているのか。(日中福祉プランニング代表 王 青)
中国・上海市で
「日式訪問入浴」が大きな話題
先日、中国で発表された2020年国内各地のGDPランキングでは上海市が1位となり、中国の改革開放以来四十数年、トップの座を守り続けている。上海は国際的な大都市であり、一度でも訪れたことがある人は、その活気や、近未来風の高層ビルが立ち並ぶ、バンドの美しい夜景などを見て、「中国であり、中国ではないような…」という不思議な印象を強く抱くようだ。
しかし、これほど大きな発展を遂げている都市でありながら、数年、いや、十数年に一度もシャワーやお風呂に入ってない人々がいることは、想像し難いことだろう。実は、そうした境遇の人々は数十万人もいると推測される。彼らは体が不自由になった高齢者や身体障害者だ。
上海は大規模な都市開発が急速に進められた。その一方で、街の中心部や郊外には、古い住宅がまだまだたくさん残っている。エレベーターなしの6~7階建ての住宅や、浴室がない住宅の住人の高齢化が急速に進んでいるのだ。